それならばと、さまざま臆測が飛ぶ天心と武尊のファイトマネーを聞いみると、こう推察してくれた。

「先日、世界タイトルマッチを行ったボクシングの井上尚弥選手のファイトマネーが2億円くらいと聞きましたが、それより多いんじゃないか。天心も武尊もファイトマネーは2億円以上だと思いますよ。そのくらい、大会実行委員の榊原信行さんは頑張って出したんだろうと思います。これからは、試合後にPPVの収入の何%かをもらう選手も出てくるはずです」

 その榊原氏は5月31日、フジテレビの中継見送りを受けての記者会見で、「(フジテレビとは)経済的な条件で折り合わなかったのではない。放映権料で折り合わなかったのではない」と放映権料自体はさほどの金額ではないことを明かした。あくまで天心と武尊の試合を多くの人に見てもらいたいのだと説明した。石井氏は3大ドームなどで大イベントをプロモートしてきた経験から、放映権料について次のように話す。

「私の時代は、ああいう大きなイベントでは、テレビの放映権料は1億円以上ありました。年末の格闘技イベントでは3億円もらったこともあります。今はもっと少ないでしょうし、今回のPPVの売り上げにはかなわないですよね。ただ、榊原さんも言っていたけど、お金の問題じゃないと思うんですよ。別に放映権料が安いから、地上波はいらないというわけじゃない。子供たちに夢を見せたいから、あるいは天心と武尊に地上波のゴールデンタイムでやらせたいから、(榊原氏は)フジテレビでやりたいと言っていたと思うんです」 

 どうしても多くの人に試合を見てもらいたい――その思いは選手も同じだっただろう。それが顕著に表れたのは、試合のルールについて「武尊が(天心が所属する)ライズのルールに合わせた」ことだったと石井氏は話す。武尊は不利なルールで闘うことになっても試合の実現を優先させたのだろう、とみる。

「今回の『ワンキャッチ、ワンアタックあり』のルールは、武尊にとっては不利です。武尊は前に出てラッシュで倒すタイプなので、クリンチされるとラッシュが止まる。せっかく、これから詰めて倒そうという時に、天心がクリンチしてうまく逃げればそこからまたスタートになる。天心は距離を取ってカウンターを狙うタイプなので、離れて戦いたいわけです。普通なら(武尊が所属する)K-1側はのまないルールですよね。それをのんだということは、武尊がどうしてもファンのために試合を実現させたかったのだと思います」

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