実際の効果については数字として、あらわれています。

 当院で2011年1月から15年10月までに教育入院を実施した患者さん105人を追跡調査し、入院前後6カ月でのeGFRを測定したところ、入院前6カ月間のeGFR低下は年換算で7程度低下していたのが、教育入院後は大幅に低下が抑えられ、入院後2年まで1程度に抑えられており、末期腎不全であるステージG5の患者さんにも効果がみられました。

 透析導入までの期間も教育入院をしているグループはそうでないグループに比べ、延ばすことができました。

 また、当院で透析を開始した患者さんの中で、長い期間追跡ができた490人(ステージG3~G5)を調査したところ、教育入院を経験しなかった患者さんたちに比べ、教育入院を経験した患者さんはより長生きであることが明らかになりました。

 慢性腎臓病に対する教育入院は欧米ではおこなわれておらず、日本独自のシステムです。

 医師以外のさまざまな医療スタッフが連携しておこなうきめ細かなプログラムは日本ならではの仕組みといえます。

 教育入院の効果については、今後、さらなるエビデンス(科学的根拠)が構築されていくでしょう。

 なお、現在は全国で80以上の病院が教育入院を実施しています(当院もそうですが、コロナ禍の影響で、受け入れを一時中止しているところもあります)。なお、当院での費用は1割負担の患者さんで約3万円、3割負担の患者さんで約10万円(差額ベッド代は別途)です。

 受けてみたい人は主治医に相談するか、インターネットなどで実施している病院を調べ、問い合わせてみることをおすすめします。

(文/狩生聖子)