山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師

 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「コロナ治療薬を処方して考えたこと」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

【データ】発熱、頭痛だけじゃない!ワクチン接種後に確認された副反応と割合はこちら

*  *  *

「オミクロン株」の感染拡大が止まりません。Our World in Data のデータによると、2月5日時点の新型コロナウイルス感染症の新規感染数は、8万8,574件。外来でも、発熱や微熱、咳、喉の痛みなどを訴えて受診される方は多く、それに伴ってPCR検査数の多い日が続いています。

 私の勤務先のクリニックの状況にはなりますが、上記のような症状をきたしている人に対してPCR検査を施行すると、だいたい半数くらいがコロナ陽性という結果が検査会社から戻ってきます。もちろん、新型コロナウイルス感染症を疑う、つまり風邪症状を認めた方に対してPCR検査を行っているため、陽性が出る割合は高くなって当然なのですが、陽性率の高さに驚く今日この頃です。

 PCR検査で陽性が出ると、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に基づいて保健所に「発生届」という届出を提出しなければなりません。外来診療や3回目の新型コロナウイルスワクチンの集団接種に加え、カルテから必要な情報を抽出しての届出の作成で、あっという間に一日が終わってしまいます。

 新型コロナウイルス感染症の治療薬として、昨年12月24日に特例承認された経口抗ウイルス薬「モルヌピラビル」(商品名は「ラブゲリオ」。以下、「ラブゲリオ」といいます)があります。供給量が十分でないため、高齢者・悪性腫瘍・慢性腎臓病・慢性閉塞性肺疾患・糖尿病・肥満・高血圧などの重症化のリスク因子を持ち、医師が必要と判断する場合に限り、処方が可能となっている薬です。

 先日、重症化のリスクが高いと判断し、初めて「ラブゲリオ」を処方した症例がありました。受診の2日前から咳を認め、翌日に38度の発熱を認めたため、受診された70代男性の方(以下、Bさん)でした。Bさんは、昨年の9月と12月に新型コロナウイルスワクチンの接種を済ませていたワクチン接種者でした。受診の5日前にあった同居はしていないお孫さんが、3日前にコロナ陽性と判明するも、濃厚接触者ではないと言われた、とのことでした。

著者プロフィールを見る
山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

山本佳奈の記事一覧はこちら
次のページ
コロナ治療薬を処方、入院は願うしかない