※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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あな痔データ
あな痔データ
あな痔(痔ろう)の構造
あな痔(痔ろう)の構造

 痔は肛門周辺に起こる身近な病気といえる。痔には、いぼ痔(痔核)、あな痔(痔ろう)、きれ痔(裂肛)がある。あな痔は若い世代の男性に起こりやすく、前段階として、激痛を伴う「肛門周囲膿瘍」を発症することが多い。切開して膿を出せば症状は落ち着くが、約半数は痔ろうになるため、油断せずに治療を受ける必要がある。

【データ】あな痔にかかりやすい年代は?主な症状は?

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 あな痔は痔の患者数の約15%を占めるにとどまるが、いぼ痔が40~60代に多く発症するのに比べて、あな痔は若い世代にも起こり、30代、40代で約50%を占めるといわれる。また、男性の発症が女性の2~5倍多いことも特徴的だ。

 痔ろうはなんらかの菌に感染することで起こる。

 肛門から約2センチ奥には、肛門上皮(粘膜)と直腸の粘膜の境目である「歯状線」がある。歯状線には肛門陰窩(肛門小窩)というごく小さなくぼみがいくつかあり、そこが入り口となって菌が侵入する。原因菌は便の中や腸管にいる大腸菌などの身近な菌だが、くり返す下痢や体力の低下などがあると、感染を起こしやすくなる。また、解剖学的に男性のほうが菌が入り込みやすい構造になっているのではないかと考えられている。

 菌が侵入して炎症を起こすと、腫れて熱をもち、激痛が起こる「肛門周囲膿瘍」となる。例えればおできが膿んで腫れ上がった状態で、あまりの痛さに多くは病院に駆け込むという。肛門周囲膿瘍は切開して膿を出せば、痛みや腫れなどの激しい症状はおさまる。しかし菌の入り口や、炎症が広がる道筋(瘻管)などを治療したわけではないので、炎症が再発する、あるいは同じ場所に細菌感染が起こるなどで膿が出続ける「痔ろう」となる。

 東葛辻仲病院院長の松尾恵五医師はこう話す。

「肛門周囲膿瘍を切開したあと痔ろうになる割合は、肛門疾患の診療ガイドラインでは三十数%といわれていますが、実際には50%以上になるのではないかと思います」

■手術が治療の中心となる

 痔ろうの菌の入り口(原発口)は肛門の中にあるが、膿の出口(二次口)はおしりの皮膚につくられる。膿や粘液が出続けて下着を汚すなどで患者のQOL(生活の質)は低下し、また何かのきっかけで二次口がふさがると再度膿がたまり、強い症状が発生する。

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