「子どものクラスター発生は、対策の落ち度というよりロシアンルーレットのように時々起きてしまう。そして、ほとんどが無症状か軽症です。クラスターが起こった施設を責めるような報道はやめるべきです。軽視はせず、データを蓄積しながら、できるだけ子どもたちの自由を守っていきたい。マスクの着用を一律に義務付けることには、議論が必要だと思います」(種市医師)

■子ども特有のリスクとは

 マスク着用の効果とリスクについて、小児の感染症に詳しい新潟大学医学部小児科教授の齋藤昭彦医師にも話を聞いた。齋藤医師はまず、最近の感染状況を踏まえ、次のように話す。

「変異ウイルスの影響で、全体の感染者が増えれば自ずと子どもの感染者も増えます。新潟県内のある保育園では、子どもから子どもへ、子どもから親へ感染という、昨年では見られなかった感染傾向も見られます。子どもに長時間、正しくマスクをつけさせることは難しいですし、マスクだけでコロナウイルス感染を予防できるわけではありません。外にいて近くに人がいないときやからだを動かすときはマスクを外すなど、メリハリは大事ですが、コロナ対策の観点からは、子どもであっても、飛沫を浴びるリスクを避けるという点でマスク着用は感染の予防に役立ちます」

 一方、子ども特有のリスクについては、こう指摘する。

「子どもは呼吸の回数が大人に比べて多い。安静時の大人は、1分間に12回ほど呼吸をしますが、小1の子どもは1分間に20回ほど呼吸します。子どもは呼吸回数を増やして、呼気から熱を多く発散するため、マスクをしていると熱を十分に逃がすことができません。口呼吸をする子も多いですし、特に暑い日は、マスク着用が熱中症のリスクになる可能性があります」(齋藤医師)

 マスクは顔の半分を覆い、子どもは顔が小さいため余計に表情が見えにくい。もし熱中症になっていたとしても、苦しいと自覚すらできない子もいるだろう。

 熱中症に詳しい帝京大学医学部病院救命救急センター長の三宅康史医師は「子どもの不調のサインは先生と親が気づくしかない」と言う。

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コロナと熱中症、一石二鳥の対策がある