2歳以上の未就学児も、年齢区分でいえば「幼児」に含まれる。だが、保育現場での着用をどうするかは、さまざまな基準のなかで施設によって対応が分かれているのが実態のようだ。

 マスク着用を巡る年齢基準は、国や機関によって異なっている。富山大学学術研究部医学系小児科学講師の種市尋宙(ひろみち)医師のまとめによると、推奨年齢は以下のとおり。

○米国CDC(疾病対策センター)=2歳未満は不要
○WHO(世界保健機関)=5歳以下は必要なし
○欧州CDC=13歳未満は必要なし
○厚生労働省=未就学児には一律にマスク着用を求めず、特に2歳未満は不要
(医療情報専門サイト「CareNet」での種市医師によるオンライン講演から)

 未就学児のみならず小学生も「不要」としているのが欧州だ。オランダの例について、種市医師はこう説明する。

「オランダの人口は日本の7分の1ですが、感染者数は日本よりも桁がひとつ多い162万人以上です(2021年7月10日時点)。ただ、子どものPCR検査の陽性率は極めて低く、0~3歳が0.3%、4~11歳が1.7%、12~17歳が5.2%。保育は通常通り実施され、小学校・中学校も対面で授業が行われているなかで、この陽性率です。子どもがコロナに罹患しづらいということは明らかでしょう。また1万7千人以上の死亡例のうち、15歳未満は0~4歳の男児一人のみです。国のホームページでも、大人は1.5メートルの距離を空け、マスクを着用するよう伝えていますが、13歳未満はマスクなし、距離もとらなくてもいいと明記しています」

 イギリスでも、マスクは12歳以上に着用を求めているが「小学生以下は不要」だと明言しているという。種市医師は「マスクに対する考え方自体が欧米と日本ではかなり異なるが、欧州の事例は、日本の対策としても参考になるだろう」と話す。

 種市医師は昨年4月、保育士のコロナ感染が起きた富山県内の三つの保育施設にヒアリング調査を行った。すると、コロナ感染の発端が保育士であった場合でも園児であった場合でも、その後感染が判明したのは保育士のみで、ほかの園児への感染はなかった。当時は今のように換気も徹底されておらず、消毒液なども置かれていなかったうえに、園児たちはマスクも着用していなかった。この結果から、「未就学児のマスクは本当に必要なのか、地面に落としたり手で触ったりするほうがよほどマスクの汚れで感染リスクが高くなるのではないか」と考え始めたという。

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マスクの子ども特有のリスクとは