消防団の操法大会(C)朝日新聞社
消防団の操法大会(C)朝日新聞社
毎年数千人の人が集まる「全国消防操法大会」(YouTubeより)
毎年数千人の人が集まる「全国消防操法大会」(YouTubeより)

 新型コロナの感染拡大が続く中、地域住民たちで構成される消防団が消火の技術を競う「全国消防操法大会」が、予定どおりの実施を見込んでいる。全国大会は10月だが、それに伴い市大会や都大会も控えており、すでに訓練を始めているところもある。50年以上の歴史があるこの大会。だが、コロナ禍で中止を決めない運営側のスタンスに、SNS上では全国の団員たちから不満の声が噴出している。

【写真】数千人が集う「消防団の全国大会」

 コロナを機に批判が強まった形だが、消防団の「理不尽な組織風土」を非難する声も散見される。全国約2200の消防団の活動の多くは健全に励んでいると思われるが、取材した各地の団員たちが口にしたのは、パワハラ、訓練への強制参加、コンパニオンを呼んだ全裸の飲み会、退団拒否といった、数々の理不尽だった……。

「このコロナ禍での全国大会実施については、疑問しかありません」

 こう話すのは、長野県に住む自営業の30代男性(入団14年目)だ。全国大会は例年、応援も含めれば数千人規模の団員が参加する一大イベント。必然的に、全国各地から消防団が集うことになる。

「感染が広がらないか心配です。開催するとなれば、大会当日だけでなく、大会に向けて数カ月前から練習を重ねます。当然、家族や会社の人間にも感染リスクを背負わせることになる。私も高齢の母と同居しているので、不安でしかありません」

 東京都の50代会社員男性(入団20年目)も、「コロナ禍での実施は理解ができない。中止にならないことが非常に残念」と嘆く。「都大会も実施予定ですし、その出場隊を決めるために、市の大会も実施することになる。変異種が増えている上、夏になってもワクチンは打てないでしょうから、とにかく不安」

 こうした声に対して、大会を主催する日本消防協会はどう捉えているのだろうか。協会側に実施の理由などを問い合わせたが、期日までに返答は得られなかった。

 地域差はあるだろうが、大会に向けた訓練には相当の負担を強いられる。前出の30代男性の分団では、大会の2カ月前から週に5回、早朝5時からの訓練を実施するという。感染に不安があっても、訓練は強制参加だ。市大会→上位大会→県大会→全国大会と勝ち進んだ場合は、約6か月間、120回ほどの早朝訓練を続けることになる。

「選手は朝4時に集合して、ウォーミングアップや準備をしています。朝が早いので、仕事にも支障が出る。自動車通勤中や勤務中、何度も寝そうになりました」

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「火事場では役に立たない」練習とは?