別の地域ではどうか。本県に住む自営業の20代男性(入団4年目)の分団では、例年、大会の1カ月前から毎日訓練があるという。平日の訓練は18時半ごろに開始し、23時ごろまで続く。

「大会に向けた訓練は基本的に強制参加。その間は残業ができないので、皆、バタバタと仕事を済ませ、急いで練習に駆けつけるような状況です。そもそも、コロナの感染拡大のリスクをとってまでやる大会なのだろうか」

そう疑問を呈し、こう続ける。

「今年に限らず、操法大会は廃止にした方がいい。実施しなくても、困ることはありません。実際の火事場では役に立たないと思う点がたくさんあります」

 この男性が「(廃止しても)困らない」の一例として挙げたのは、実践的とは言いがたい訓練方法だ。

「選手は4人だけなので、全体練習の時も、選手以外の団員はサポート役として見ているだけ。若手たちは『回れ右』や足並みをそろえて歩く練習をさせられることもあり、ポンプを触らないまま年月が経っていく。実際の火事場では全員がある程度ポンプを使えなければいけませんが、こんな状況では、技術が行き渡ることもありません」

 前出の50代男性によれば、操法大会用の訓練は器具の取り扱いや消火の基本的な流れなどを網羅しているので、本来であれば入団3年目ぐらいの人に適した内容だと話す。だが、実際の大会では、入団十数年の団員が何年も続けているような状況で、「もはや競技のようになってしまっている」と嘆く。

 勝ち進むための評価基準の一つとなっているのが、動きを綺麗に見せる「規律」という項目。だが、実際の火事場ではまったく役に立たないという。

「それでも大会に勝つためには必要なので、動きを揃えるシンクロなどを徹底的に練習します。例えば、4人の動きをシンクロさせるために、何十回もポンプ車に乗り込む練習や、指先やかかとの向きが揃っているかなど、何度も同じ動きを練習するのです。それに割く時間があるくらいなら、近隣の消防署との連携訓練や、複数のポンプを使った訓練などを行ったほうが、はるかに現場で役に立つはずです」(前出の30代男性)

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「飲み会で全裸にさせられた」