地域や団によるだろうが、話を聞いた消防団たちからはいずれも、団の「組織体質」を疑問視する声が挙がった。前出の30代男性は、「過去には、パワハラととらえかねない出来事は何度も見てきました」と訴える。

「ミスをすれば、『怒鳴る』『蹴る』『練習を切り上げて帰る』。練習に出てこない団員を恫喝するといったこともありました。大会が近づくと『気合いを入れるため』と選手を集め、意味のない説教をすることも当たり前のようにあります」

 訓練中にはケガがつきものだというが、公務災害として申請しづらい雰囲気があるという。

「消防団の公務災害の7割は操法練習中に起こると言われていますが、軽いけがは報告されないことが多く、氷山の一角でしかない」(前出の30代男性)

 さらに、「断れない飲み会」が、団員たちの重い負担になっているという声もある。

「今はコロナで控えていますが、例年は1カ月のうち10回近く飲み会がありました。訓練が23時過ぎに終わるので、深夜1時すぎまで飲むこともあります。役職についたら、飲み会に来られない場合は代理をたてないと欠席させてもらえません。上の人が帰らないと帰れない雰囲気があって、翌日の仕事に支障が出るほどの睡眠不足になります」(20代男性)

 話を聞いたこの消防団の飲み会は、年に何度もコンパニオンを呼んでいるという。

「20代の私にとってはコンパニオンを呼んで楽しむ感覚が理解できませんし、金額だってかさむはず。大会の時などは泊まりなので、コンパニオンを呼んで、選手は全裸にさせられたこともあります」

 団の資金繰りについても問題が浮上している。政府が全国1719団体を対象に実施した実態調査(2020年4月実施)によれば、報酬や手当を団員個人に直接支給していない消防団は約6割。その多くは団が預かる形をとっているといい、飲み会や慰安旅行などに使われているという。前出の20代男性の団でも、個人に支払われる日当は、団が預かって運用する形をとっているという。

「会計報告はないため、どういう用途で使われているのか定かではありません。地域住民からも消防費という名目でお金を徴収していますが、派手な飲み会やコンパニオンに使っている可能性もありますね」

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