中国MMA界で未来のエースとして期待されているソン・ヤドン(写真/gettyimages)
中国MMA界で未来のエースとして期待されているソン・ヤドン(写真/gettyimages)

 コロナ禍で無観客大会が続く総合格闘技の最高峰UFC。6月27日(現地時間)、ラスベガスで開催された「UFC on ESPN 12」では佐藤天(さとう・たかし)が初回TKO勝ち、またRIZINを経て米・女子団体INVICTAでストロー級王者となった村田夏南子のUFC参戦も発表になった。だが、現在UFCと契約を結ぶ日本人ファイターはこの佐藤と村田に魅津希を加えた3人のみ。かつてはアジアンMMAをリードする存在であった日本だが、現在は他国の躍進を受け後塵を拝する立場となっている。

 それを印象付けたのが昨年8月、ジャン・ウェイリーが果たしたUFC世界女子ストロー級王座の戴冠劇。日本・韓国といった国に対しUFCでは後発であった中国だが、先んじての王座奪取を成し遂げた(アジア全体では中央アジア・キルギスのワレンチナ・シェフチェンコが18年12月に女子フライ級王者となっている)。中国武術(少林拳と散打)をベースに持つウェイリーはジェシカ・アンドラージをわずか1R 0分42秒でTKOし王座を獲得。今年3月には元王者ヨアナ・イェンジェイチックを迎えてタイトルマッチを行い、打撃戦の末に判定2-1で振り切り初防衛を成功させた。

 同じストロー級ではヤン・シャオナンも現在ランキング10位に名を連ねている。シャオナンは手数の多い打撃とフィジカルを生かし、UFC参戦以来5連勝(負けなし)。18年11月には日本の近藤朱里も下している。

 男子でもウェルター級のリー・ジンリャンは14年の初参戦からUFC在籍が6年を数え、これまで4連勝(16年7月-17年11月)と3連勝(18年6月-19年8月)を記録。バンタム級のソン・ヤドンは17年11月以来UFCで6戦を戦い、5勝1分と負けなしでファイトボーナスも4度獲得するなど、中国MMA未来のエースを期待されている。

 UFCは17年11月の上海大会を皮切りに3年連続で中国での大会を開催。さらに19年6月にはMMA教育研修施設である「UFCパフォーマンス・インスティチュート上海」をオープンし、中国での展開に力の入れようがうかがえる。ウェイリーというナショナルヒーローが誕生、ヤドンのような次世代を担う選手も出てきており、今後も“MMA大国”への歩みを進めていきそうだ。

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韓国にも世界最高峰で活躍するファイター