藤原氏/下がり藤長寿、強い繁殖力、そして美しさを兼ね備えた藤。中臣鎌足を祖とする藤原氏の代表紋
藤原氏/下がり藤
長寿、強い繁殖力、そして美しさを兼ね備えた藤。中臣鎌足を祖とする藤原氏の代表紋
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牛車(ぎっしゃ)/「平治物語絵巻」より、国立国会図書館所蔵
牛車(ぎっしゃ)/「平治物語絵巻」より、国立国会図書館所蔵
源氏/笹竜胆竜胆の花と葉を組み合わせた意匠の紋。その葉が笹に似ていることから命名された
源氏/笹竜胆
竜胆の花と葉を組み合わせた意匠の紋。その葉が笹に似ていることから命名された
平氏/揚羽蝶不死再生、子孫繁栄を象徴する蝶は、平氏一族が家紋として使用したとされる
平氏/揚羽蝶
不死再生、子孫繁栄を象徴する蝶は、平氏一族が家紋として使用したとされる
橘氏/橘奈良時代の橘諸兄が有名な橘氏。しかし平安時代初期に衰退したため家紋の使用例は少ない
橘氏/橘
奈良時代の橘諸兄が有名な橘氏。しかし平安時代初期に衰退したため家紋の使用例は少ない
イラスト/さとうただし
イラスト/さとうただし

 最近では意識することが薄れた家紋だが、歴女(歴史好き女子)や戦国武将ゲーマーにとっては定番なアイテムだったりする。家紋検索アプリが登場したり、やはり家紋は日本人にとって切っても切れない存在といえる。そんな家紋だが、2月5日発売週刊朝日ムック『歴史道 Vol.8』では家紋と名字の日本史を大特集。読んだその場で話したくなる「家紋」と「名字」のなるほど話をここに紹介する。

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■どの家にもある家紋と名字は、なぜ生まれたのか?

 みなさんは、ご自身の「家紋」と「名字」を意識されることがあるだろうか? お墓参りのときなどに、多くの墓石に刻まれた家紋と「佐藤家」「田中家」などの名字を見るはず。それはごく当たり前の光景ながら、いずれも日本人の生活に無くてはならないものだ。

 いったい、この両者はどのようにして生まれ、現代の日本社会に根付いたのか。日本人であれば、そのルーツはぜひ知っておきたいところ。そこで、まずは「家紋」の起こりから解説したい。

 史料に見るかぎり、家紋は平安時代の中ごろに貴族たちが牛車(ぎっしゃ)の車体に入れたことに始まった。系図集『尊卑文脈』には藤原実季(1035~1092)が、巴(ともえ)紋を牛車に用い始めたことが記されている。現代における自動車のナンバーやステッカーのように、自分や他者の車を見分けるためのものだったのだろう。

 これが衣服や調度品などにも用いられ、武士たちが戦場で敵味方の区別をつけるため、あるいは自家の存在を周囲にアピールするためのマークとしての意味合いを帯びていく。

 時代劇でおなじみの、武士が着用する直垂(ひたたれ)に家紋が描かれるようになったのは室町時代から。鎌倉時代の頃は大きな文様だけであったが、室町時代より自家の文様を入れた大紋直垂(だいもんひたたれ)が礼服として着用された。

 有名な織田信長の肖像(長興寺蔵)は、信長が着ている裃(かみしも)に五三桐(ごさんのきり)紋が入っている。これは信長が足利義昭を上洛させ、将軍職に就任させたときに足利家から恩賞として与えられたと伝わる。天皇家や足利将軍家から下賜される菊紋や五三桐紋などは、自家の権威づけや経歴に箔をつけることにもなった。

 また各地の大名家でも、主君が家臣に家紋を下賜したり、名前に一字を与えたり(偏諱=へんい)、勲功に対する報賞としても用いられた。天下を取ったあとの豊臣秀吉は、配下の大名に自分の旧名字である「羽柴」の名乗りを許したり、桐紋を与えていた。

■武士が名乗った名字、町民が盛り上げた家紋の文化

「名字」の話が出たところで、お次は「名字」のルーツを探ってみよう。現在の日本では「名字」のことは「姓」や「氏」でも通じるとおり、いずれも同じ意味で使われるが、最初は別々のものだった。

 4世紀ごろ、同族(同じ血族)であることを示す「氏」が使われ始め、飛鳥時代には「安倍氏」「蘇我氏」「大伴氏」などが活躍した。やがて、大和朝廷が政治的な地位や職業をあらわす意味である「姓」(かばね)を氏族に与えた。しかし、朝臣(あそん)などの同じ「かばね」を名乗る者だらけになり、個人の識別が難しくなる。そうした氏族に対し、奈良時代以降は「かばね」とは別に「姓」(せい)が与えられた。「源」「平」「藤原」「橘」の四姓が、その元祖というべきものだ。

 だが、平安時代になると同じ姓を持つ者が増え、政界のほとんどを「藤原」姓が独占。またもや個性の識別が難しくなってしまったことで登場したのが「名字」である。

 名字は住んでいた土地の名前をつけるのが一般的。京都の公家であれば京都の道や路地をそのまま名乗った。たとえば一条通りに面したところに屋敷があれば「一条」。同じく「二条」や「三条」もいた。

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庶民の名字は「田んぼの中」ならあの名字に決まり!