誰もが幸せな形でロッテからFA移籍となった鈴木大地 (c)朝日新聞社
誰もが幸せな形でロッテからFA移籍となった鈴木大地 (c)朝日新聞社

 千葉ロッテマリーンズ広報部がすごい。情報戦略やイベント企画能力などで他球団より一歩先を走っている。今オフも球団主導で多くの話題を球界へ提供し、大きく取り上げられてきた。

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 最もインパクトがあったのは、FA楽天に移籍した鈴木大地をめぐる一連の動向だった。舞台となったのは、11月17日にZOZOマリンスタジアムで開催されたロッテのファン感謝イベント『スーパーマリンフェスタ2019』である。

「内容は言えないが、いろいろな話をさせていただいた。2球団だけではなくロッテもそう。簡単に決められることではない」。国内FA権を行使し、自身の去就について熟考中のチームリーダーはそう話した。

 当時の報道では巨人、楽天と交渉中とされる一方、所属球団のロッテもFA残留を認めるという形で伝えられていた。そのため、『スーパーマリンフェスタ2019』では、ファンから大声援も起こるなど慰留ムードが漂った。「本当にありがたかった。ここまでは選手会長として、この感謝デーをしっかりやることばかり考えていた」という本人のコメントを聞く限り、この時は進路について迷っているようにも見えた。

 しかし水面下では、さまざまなことが同時進行だったようだ。イベント閉会式では自らがマイクを持ち、自身が発起人となった勝利後にファンと共に喜びを分かち合うパフォーマンスも見せた。結果的にこれが最後の別れの儀式になった。

「鈴木退団はイベント開催時ですでに決定事項でした。鈴木もお世話になったロッテのために一肌脱いだんです。この日限定グッズも発売されるなど球団は最後のビジネスを行い、鈴木はファンとのお別れを済ませることができた。両者にとって良いことだったと思います」

 ロッテ担当記者が語るように、最終イベントとして誰もが喜ぶ形の着地点となった。

「鈴木はかなり早い時点で他球団移籍を決めていたようです。しかし、生え抜きのチームリーダー流出は球団にとってもイメージが悪い。鈴木も『お金に目がくらんだ』と思われかねない。両者にとって最も良い形を入念に模索したようです」

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