ロッテ球団のPR部隊が先頭に立ち、情報をうまく活用しながら、今回の移籍騒動をプラスに転嫁した。そして翌18日には楽天移籍が発表された。実にスムーズな流れであった。

 ロッテ球団広報部はここ数年、さまざまな形で独自の情報提供を行い、球団を盛り上げてきた。常時「広報カメラ」を帯同させ、動画でチームの裏側まで見せる。「謎の魚」と呼ばれる意味不明なキャラクターは、他球団のファンまで取り込んだ。また「売り子ペナントレース」と題し、球場売り子たちの売り上げ数を競わせることのイベント化も話題になった。

「広報トップがアイデアマンで行動力がある。他球団ではできないような企画も、それまでのさまざまな成功企画を生み出してきた実績があるので実現できる。これがロッテの名物。ファンからも好評で、チームが勝てなくても客足が伸びている要因の1つです」(前出ロッテ担当記者)

 その陣頭指揮を執るのは、広報メディア室室長・梶原紀章氏。スポーツ新聞記者を経てロッテ入り。第1回WBC日本代表でも広報の重責を任され、世界一にも立ち会っている。そういった経験を生かし、チームをうまく露出させる方法に長けている。「広報カメラ」を撮影するのも、もちろん梶原氏だ。

 そして毎年手がける著書『千葉魂』は6年連続で発売されるほどの長寿本。千葉近辺ではプチベストセラーとなっているほどである。「梶原さんの本は新聞記事などでは読めないような深い話が多い。毎年、買っています」とロッテファンの多くが口にする。

 本拠地ZOZOマリンスタジアムには、本塁打増産を願い『ホームランラグーン』を新設。長打力アップで上位進出を目指した。結果として今年もBクラスに終わったものの、チームが勝てない時にこそ露出を増やすのが、広報としての腕の見せどころ。鈴木の件以外にも、オフの動きは活発であった。

 10月17日のドラフト会議では4球団競合の末、163キロ右腕の佐々木朗希(岩手・大船渡高)を獲得すると、高校生ナンバーワン投手をこれでもかというほど露出するとともに、12月9日の新入団会見をCS局で緊急テレビ生中継。11月25日には楽天からFA宣言していた美馬学の入団を発表すると、その後の12月3日には入団会見を大々的に行った。年末には各媒体で井口資仁監督のインタビューが掲載されたことも記憶に新しい。

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まさか、鳥谷獲得も?