英語民間試験導入と東京五輪は、その実行プロセスにおいてのゴタゴタにいくつもの共通項が見られる。なかなか興味深い。

 たとえば、文科省は英語民間試験導入について「大学入試において、英語資格・検定試験を活用し、英語4技能の評価を推進することの意義について」のなかで、受験生のメリットをこう強調している。

「受験生は、志望する大学・学部等ごとに資格・検定試験実施主体に成績証明書の発行を請求し受領した上で、それを各大学に提出することが不要となり、手続面だけでなく場合によっては経費の面でも出願の負担が軽減されます」(文科省ウェブサイト)

 受験生は「負担が軽減」とは思わないだろう。「手続面」で「軽減」された分は、受験料や交通費どころか、さらなる出費がかさむ。離島や山間部などに住む受験生が試験会場に向かうだけで、交通費、場所によっては宿泊費などのお金がかかり、「負担」は増大するばかりだ。

 また、英語民間試験の会場が離島や山間部など遠隔地などでの設置がむずかしいことについて、文科大臣は「試験会場を増やす方向で検討する」旨の発言を繰り返し、最近では「遠隔地の学生に交通費支援制度を作る」と説明をしてきた。

 しかし、試験の実施会場は簡単に見つかるものではない。国会の委員会では、高校を会場にして教員に試験監督をさせればいいという案も出た。だが、入試直前の多忙期に教室を明け渡すのはむずかしい。学校の教員に試験の運営を任せるのは、過重負担となり、教員の働き方改革にも逆行する。

 一方のJOCである。東京五輪の招致活動ではこんな能天気なフレーズを示していた。

「この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」(「TOKYO2020立候補ファイル Discover Tomorrow」 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会編)

 マラソンと競歩の選手は、真夏の東京を「温暖」「理想的な気候」とは評価しないだろう。しかし彼らはオリンピック代表をめざし、暑さ対策を兼ねた練習を繰り返してきた。JOCや東京都も、かぶるタイプの傘、打ち水、マラソン午前3時スタートなどのアイデアを出したが、悲しいかな、失笑を買うだけだった。

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