英語民間試験導入の延期を表明した萩生田光一文科大臣(c)朝日新聞社
英語民間試験導入の延期を表明した萩生田光一文科大臣(c)朝日新聞社

 11月1日、文部科学省は英語民間試験導入の延期を決定した。試験対策を早くから進めてきた高校生、高校教諭らは不信感を示した。高校生は「途中で変えるぐらいなら、最初から決めてほしくなかった」と非難し、高校の校長は「もう現場は動いている。行き場のない憤りがある」と怒る(談話はいずれも朝日新聞11月2日)。一方で、英語民間試験の導入については、地域格差、経済格差をもたらすという理由から反対の声も大きく、延期を歓迎する声が聞かれた。

 英語民間試験導入の延期の決定とほぼ時を同じくして、もう一つ、社会を大きく揺れ動かす決定がなされた。東京オリンピック競技大会(以下、東京五輪)で、マラソンと競歩が札幌に会場を移して行われることになった。東京五輪代表をねらう選手がこう批判した。

「東京のコースが決まった日から準備が始まっていた。それは海外の選手も同じ。時間を返せと言いたいし、開催10カ月前に走るコースが決まるなんてありえない」(朝日新聞10月30日)

 だが、炎天下での競技に、選手、スタッフを心配する意見は多くあった。札幌移転を評価する人もいる。

 英語民間試験の導入、炎天下でのマラソンと競歩は、ともに受験生、選手に大きな負担を強いるとして批判にさらされていた。そして、延期と移転というちゃぶ台返し、それに対する関係者の怒りと称賛。これらの問題を巡る構造はそっくりだ。

 何の因果か、大学入試と東京五輪、いずれも文科省が関わる一大イベントである。

 文科省と東京五輪の関係をすこし説明しよう。2015年、文科省の外局としてスポーツ庁が発足。東京五輪、サッカーやラグビーのワールドカップなど「スポーツに関する施策を総合的に推進する」ことを目的としている。スポーツ庁オリンピック・パラリンピック課という部署が担当する2020年東京五輪は、日本オリンピック委員会(以下、JOC)を中心に、文科省、東京都などが関わって運営する。

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