一方、2018年、元総理である森喜朗・東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長の話。

「この暑さでやれるという確信を得ないといけない。ある意味、五輪関係者にとってはチャンスで、本当に大丈夫か、どう暑さに打ち勝つか、何の問題もなくやれたかを試すには、こんな機会はない」「部屋の中で暖房をたいて実験をするわけではない。これが自然で起きていて、逆らうわけにはいかない。この暑さでそっくり2年後、東京で(五輪を)やるということを考えなければならない」(「日刊スポーツ」2018年7月18日)

 選手にここまで求めるのはあまりに酷ではないだろうか。

 知事、文科大臣、元総理。立派な経歴を持ち、理性も知性もあるはずなのに、いったい、どうなってしまったのだろう。入試改革と東京五輪には、彼らにこう発言させてしまう得体の知れない「魔力」があるのだろうか。

 ならば、悪魔払いが必要なのかもしれない。そのためには、いったん立ち止まってじっくり冷静に考える。間に合わなかったら、延期する。中止する。場合によっては返上する。そういう選択肢を持ち合わせる勇気を持ってほしい。

 筑波大学附属駒場高校の2年生は、入試改革を次のように厳しく批判した。

「大学入学共通テスト。ひとことで言えばこれは入試ではありません。入試を入試じゃなくする制度です」「ぼくたちに入試を受けさせてください」(AERAdot.10月25日)

 いま、マラソンと競歩の選手は憤りを抑えながら、札幌移転に合わせた準備をしている。しかし、競技コースが決まっていないので、競技に向けた準備が十分にできず、困惑するばかりだ。体調管理、体力づくりは並大抵のことではないのだから。

「札幌移転。ひとことで言えばこれは競技ではありません。競技を競技じゃなくする制度です」「ぼくたちに競技をさせてください」―――そう言われないよう、万全な体制づくりをしてほしい。

教育ジャーナリスト/小林哲夫