戦うかどうかを見極める点は、冒頭でも触れたように、「対象がアホであるかどうか」です。言い換えれば、たった一度の大切な人生を賭ける価値がある相手かどうかです。

 もっといえば、戦うことは手段でしかありません。目的は自分の人生を謳歌することです。そのための手段として戦うしか選択肢がないなら戦うべきでしょう。

 それ以外に平和裏に目的が達成できるなら、戦わずして勝つ、すなわち戦わずして目的が達成できる手法をとるべきでしょう。

 自分の人生を生きることや自分の人生の目的に関係ないなら、放っておけばいいでしょう。嫌われて怨念を浴びないよう、適度に距離をとりながら、あやしていけばいいのです。いかにそのアホのせいで苦しんでいる人がたくさんいても、そのアホを完璧に抑え込んで反撃されないくらい撃滅できる力が自分にないなら、戦っても皆の役に立たないばかりか、恨みを買い、自分の人生の目的達成が遠のくばかりです。

 多くの人を救いたいなら、遠回りですが、まずは実力をつけることです。アホを抑え込み完璧に封じ込むことのできる力のことです。

 力がつく前に言動をあらためさせたいなら、相手を注意深く観察し、アホの傾向と対策を分析し、アホの欲するものを与え、言動をかける動機付けになりそうなものはないか、しっかり考えることです。

 アホの狙いが、プライド、お金、出世、ストレス解消、等々の中の何なのか? どうすればそれを、自分も含めた、苦しめられている皆にとって最もダメージの少ない形で満たしてやれるか?

 それを考え抜き、時に苦しめられている皆で連携して、動機付けからアホの言動を少しずつ変えていきましょう。

 社会的にコンプライス重視機運が高まり、パワハラやセクハラへも社会や会社内の目が厳しくなっているので、目に余る場合は、証拠をしっかり押さえて、それらに訴えることを取引材料にするのも手でしょう。弁護士も世に余っていますので、最終的には彼らも動員して、抑え込むのも手かもしれません。

 とにかくこちらの感情は抑えてクールに相手を注意深く観察することから始めましょう。

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田村耕太郎

田村耕太郎

田村 耕太郎(たむら・こうたろう)/国立シンガポール大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授。ミルケン研究所シニアフェロー、インフォテリア(東証上場)取締役、データラマ社日本法人会長。日本にも二校ある世界最大のグローバル・インディアン・インターナショナル・スクールの顧問他、日、米、シンガポール、インド、香港等の企業のアドバイザーを務める。データ分析系を中心にシリコンバレーでエンジェル投資、中国のユニコーンベンチャーにも投資。元参議院議員。イェール大学大学院卒業。日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。著書に『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』(マガジンハウス)、『野蛮人の読書術』(飛鳥新社)、『頭に来てもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)など多数

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