ところで、皆さんは日本の大麻は、基本的にマリファナなどの薬物にはならない品種だということをご存知でしょうか?また、戦前までは自由に大麻を栽培していたという話を聞いて、かつて日本人は平気で乱用していたと勘違いしていませんでしたか?

 しかし、乱用の元となる大麻の花や葉に含まれるTHCという物質の含有率は品種によって違いがあり、日本在来の大麻はTHCの含有率が十分低く、概ねまたは、すべて無害な品種であったと考えられています。それらの理由から、わが国においては戦後のある時期まで大麻の乱用が問題になることはありませんでした。

 このように、成分的・遺伝的にマリファナなどの薬物とは無縁な日本の大麻ですが、薬物乱用の煽りを受け、栽培の継承が困難な状況に陥っています。そして、日本の麻(大麻)の伝統を守ろうと活動している私たちは苦しい戦いを強いられています。

■「大麻取締法」は、日本の大麻農家を守るための法律

 戦前においては、海外から輸入する有害大麻を「印度大麻草」などと呼びマヤクに指定し、日本の大麻とは区別して考えていました。

 ですが、敗戦直後の昭和20年、占領軍は、大麻はすべて「同一種」として全面的な禁止令を出しました。しかし、大麻は衣服や漁具、下駄の鼻緒などに欠かせぬ生活必需品だったため日本政府は、昭和23年「大麻取締法」を制定し、許可を受けさえすれば大麻を取り扱えるようにしました。そして、第二十二条の二の二で「前項の条件は、大麻の濫用による保健衛生上の危害の発生を防止するため必要な最小限度のものに限り、かつ、免許又は許可を受ける者に対し不当な義務を課することとならないものでなければならない。」として大麻農家を保護する規定も定めました。

「大麻取締法」といえば大麻を禁じる法律と解釈している人が多いと思います。実は、その目的は、乱用を防ぎつつ日本の大麻を守ることなのです。

 さらに、薬物乱用防止のための国際的取り決めである「麻薬単一条約」では、「この条約は、もっぱら産業上の目的(繊維及び種子に関する場合に限る)又は園芸上の目的のための大麻植物の栽培には、適用しない。」とし、薬物ではない一般産業目的の大麻は、「禁じない」と明確に定めています。このように国際条約上も一般産業用の大麻栽培を守る形になっているのですが、そのことは不思議なほど無視されています。

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「大麻=麻薬の大親分」のイメージ