そして、皆さんに理解していただきたいのは、マヤクのマは、本来「病ダレ」でシビレルなどの意味を持つ「痲」だということ。当用漢字にないからという理由でアサ(麻)が代用字として定着してしまったことで、「大麻=麻薬の大親分」という情けないイメージが日本国民に広まってしまっているのです。

■麻の葉に毒あり。花にも殊の外毒あり。

 とはいえ、日本の大麻の保護再興を語る場合、有害大麻との交雑などが起これば保健衛生上の問題が生じる植物だということは忘れるべきではありません。しかも、戦前と違い、ドラッグ賛美の思惑を持った人が一定数存在し、マリファナ無害論を喧伝し、時に日本の麻(大麻)の健康的で神聖なイメージを悪用して仲間を増やそうとしていることに警戒感を持って臨んでいくことが必要です。

 日本の在来の大麻は、その葉や花に含まれる有害物質であるTHCの含有率の低い無害な大麻だと先に述べましたが、大昔でも稀に有害大麻と接する機会があったようで、数は少ないながらそのような記録が残っています。

 海外の場合は、大麻の向精神作用を「よい」ことのように書かれている場合があります。しかし、わが国では、筆者の知る限り「毒」として記されています。

 例えば、江戸時代の「甲子夜話」という文書に「麻の初生の芽を食すれば発狂す」とあり、「古今要覧稿」には、「麻の生葉には毒あるものなり」「花にも殊の外毒あり」と書かれています。興味深いのは、忍術伝書「萬川集海」の記述で、敵を「虚け」にする「阿呆薬」として麻の葉を用いたとしています。大麻の葉と花に含まれる有害成分THCは、ヒトの認知や記憶の能力を下げ多幸感を感じさせる働きがあります。「阿呆薬」とはまさに言い得て妙です。

 このように、日本人は古来より、有害大麻の危害に気づき、それを避けながら栽培・活用してきたのかもしれません。こうした賢明な先達の教えに倣い、有害大麻の害を知った上で、大麻を有用に活用し伝統を守っていきたいと思います。

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日本の麻栽培は窮地に