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全国にある“ヘンテコな弔い” 長野・善光寺にある可哀想な郵便物を弔う「迷子郵便供養塔」

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鵜飼秀徳dot.#朝日新聞出版の本#読書
善光寺境内にある迷子郵便供養塔(撮影/鵜飼秀徳)

善光寺境内にある迷子郵便供養塔(撮影/鵜飼秀徳)

家畜の糞を餌にハエを飼い、生まれたウジをタイなど養殖魚の飼料にする(株)ムスカの研究所にある「いえばえの碑」(宮崎県都農町、撮影/鵜飼秀徳)

家畜の糞を餌にハエを飼い、生まれたウジをタイなど養殖魚の飼料にする(株)ムスカの研究所にある「いえばえの碑」(宮崎県都農町、撮影/鵜飼秀徳)

『ペットと葬式 日本人の供養心をさぐる 』(朝日新書)/鵜飼秀徳著

うちの子であるペットは人間同様に極楽へ行けるのか? そう考えると眠れなくなる人も少なくないらしい。この問題に真っ正面から取り組んで、現代仏教の役割とその現場を克明に解き明かしていく。ペット塚は歴史の始まりからあり、現代ではAIBOだって手厚く葬られている。

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 日本は、人間以外の生き物も丁重に弔ってきた歴史がある。

 例えば昆虫。養蚕が盛んだった信州にはカイコにまつわる供養碑がたくさんある。蜂蜜を製造する過程で死んだミツバチの供養塔なども千葉や和歌山などに存在する。殺虫剤メーカーなどは、商品開発や殺虫剤散布によって死んだゴキブリやダニなどの害虫を、毎年のように寺や神社などで弔っている。

【「いえばえの碑」も!? 写真はこちら】

 近年、虫の供養塚を立てた人もいる。解剖学者の養老孟司さんは2015年、鎌倉の建長寺に建築家の隈研吾さんの設計で虫塚をこしらえた。それはゾウムシの頭部を模った石像を中心に置き、周囲を金属製の虫かごが取り巻くモダンな意匠。金属部分には粘土が吹き付けられていて時の経過とともに苔が生していくという演出が込められている。

 養老さんは昆虫研究家でもあり、箱根の別宅には膨大な昆虫の標本が並ぶ。虫塚建立記念法要の挨拶文で養老さんはこのように述べている。

《長年虫を標本にしてきましたので、その供養が第一です。解剖学教室に奉職している間も、毎年解剖体慰霊祭に参加してきましたので、慰霊の癖がついたのかもしれません。虫に霊や心があるかというご意見もあるかと思いますが、睡眠に関する遺伝子が見つかっているので、意識はあるのではないかと思います》

 魚介類に関しても、浜名湖畔には巨大な「ウナギ観音」というウナギを祀る仏像があるし、愛媛県には真珠供養がある。真珠供養は、真珠の採取の際に命を落としたアコヤガイを弔うものだ。三重県や山口県には、伝統的にクジラを弔う習慣が根付いている。

 生き物だけではない。道具などの「モノ」だって、日本人は弔いの対象にしてきた。縫い針、筆、メガネ、人形、古本、包丁、財布……。長年、使い込んだモノに日本人は愛着を持ち、仮に使い古したとしても無下にゴミ箱に捨てるということはしてこなかった。

 こうした、「人間以外の弔い」を自著『ペットと葬式 日本人の供養心をさぐる』(朝日新書)で紹介している。拙著でも取り上げた「ヘンテコな弔い」の最たる例を紹介しよう。

「迷子郵便」をご存知だろうか。

 宛先が間違っており、さらに差出人が書かれていないがために相手に届けられなかった可哀想な郵便物を指す。迷子郵便は一定期間、郵便局で保管された後に処分されてしまう。

 実は、迷子郵便の供養塔が長野の善光寺にある。筆者が見つけた迷子郵便供養塔は、善光寺の最奥部にあった。白御影石と黒御影石を組み合わせて造られた、実に堂々たる供養塔である。供養塔はおよそ1.5:1の縦横比になっていて、どこかハガキを想起させる。縁起にはこう記されていた。


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