第2試合は、やはり大阪桐蔭(北大阪)の中軸メンバーのプレーがポイントとなるだろう。例年であれば、全チームが一通り登場した時点でプロ野球のスカウト陣は甲子園からは姿を消すが、今年は、大阪桐蔭の選手たちをチェックするために関西担当や部長クラスが繰り返し足を運んでいる。準々決勝でその能力の高さを改めて見せつけたのが藤原恭大だ。第3打席では渡邉勇太朗(浦和学院)の内角いっぱいの143キロストレートをヒジをたたんで振り抜きライトスタンドへ運ぶと、第5打席では初球の甘いチェンジアップを逃さずに弾丸ライナーでセンターバックスクリーンへ叩き込んだ。藤原は今大会3本塁打で昨年春の選抜での2本を合わせると甲子園通算は5本塁打となる。これは、左打者では大阪桐蔭の先輩である森友哉(西武)と並び最多記録であり、準決勝ではその更新にも期待がかかる。

 もう一人のドラフト1位候補である根尾昂も、準々決勝では持ち味である左中間へ一発を放ち、藤原とともに2試合連続ホームランとなった。この日は投手として先発した疲れからか、最後の2打席は下半身の粘りがなく簡単に三振を喫したが、野手に専念すれば、さらなる活躍が期待できるだろう。もう一人、今大会で評価を上げているのがエースの柿木蓮だ。ここまで4試合、18回を投げて22三振を奪い、失点はわずかに1。与四球0(与死球は2)と抜群の安定感を見せており、スピードも今大会では全投手で最速となる151キロをマークしている。根尾の状態がもうひとつということもあり、準決勝では先発が予想されるが、そのピッチングにも注目だ。対する済美は、エースの山口直哉が準々決勝でリリーフ起用となり、球数を抑えられたことが大きい。ただ、右投手にはめっぽう強く簡単には抑えられる大阪桐蔭打線ではないだけに、準々決勝で好投した池内との継投も検討する必要があるだろう。

 頂点まであと二つ。プロ注目の超高校級選手が勝ち残ったこともあり、例年以上の盛り上がりを見せている。彼らが大観衆の前でさらなる進化を見せるのか、勝敗はもちろんだがその部分にもぜひ注目してもらいたい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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