ヤクルトの山田哲人 (c)朝日新聞社
ヤクルトの山田哲人 (c)朝日新聞社
八重樫幸雄氏
八重樫幸雄氏

 野球で最も難しい技術と言えばバッティングではないだろうか。3割を打って大打者と言われるように、失敗の方が圧倒的に多いのがバッティングである。また、アマチュア選手がプロで苦労することも多い。即戦力として期待されていきなり結果を残す選手は圧倒的に投手が多いことからもそれが分かるだろう。高校通算111本塁打を放ち、プロ入りしたルーキーの清宮幸太郎(日本ハム)も、やはりプロの壁に苦しんでいる。そこで今回は現役時代強打の捕手として活躍し、コーチとしても多くの強打者を育成してきた元ヤクルトの八重樫幸雄氏に、バッティングで重要なポイントを現役選手や過去の名選手について触れながら解説してもらった。

*  *  *

 先述したようにアマチュア時代に強打者だった選手がプロの世界で苦労することは珍しくない。では、実際どのあたりに問題があるのだろうか。

「よく言われることですが、高校生の場合はまず金属バットの影響が大きいですね。最近は練習では、木製や竹のバットで打っている学校もありますけど、やっぱり練習と試合では全然違います。金属バットはボールにぶつけるだけで飛びますから、どうしても利き手(右打者なら右手)で強く打っていることが多い。木のバットはそんなに反発しないので、この打ち方だと飛ばないんですね。両手で強く打たないとボールが飛びません。利き手で強く打つクセが大学や社会人でも残っている選手もいます。稲葉(篤紀、元ヤクルト、日本ハム)も入団してきたときは左手(の力)が強かったですね。逆に高校から入団してきても、岩村(明憲、元ヤクルトなど)は両手の力のバランスが良かったです。そのため、比較的すぐに木のバットに対応できるようになりました」

 利き手で強くぶつけるように打つ、いわゆる「金属打ち」はアマチュア球界でも話題となることが多い。特に近年の高校野球は食事で体を大きくして、そのパワーに頼った打ち方で結果を残せてしまう傾向がある。しかし、それではプロでは通用しないのだ。ではそのような打ち方を直すポイントはいったいどこにあるのだろうか。

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら
次のページ
打ち方を直すポイントは…