著者:古賀茂明(こが・しげあき)/1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元報道ステーションコメンテーター。最新刊『日本中枢の狂謀』(講談社)、『国家の共謀』(角川新書)。「シナプス 古賀茂明サロン」主催
著者:古賀茂明(こが・しげあき)/1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元報道ステーションコメンテーター。最新刊『日本中枢の狂謀』(講談社)、『国家の共謀』(角川新書)。「シナプス 古賀茂明サロン」主催
韓国の文在寅大統領(左)と握手する安倍晋三首相 (c)朝日新聞社
韓国の文在寅大統領(左)と握手する安倍晋三首相 (c)朝日新聞社

 米朝首脳会談が終わった。

【写真】韓国の文在寅大統領と握手する安倍晋三首相

 この先、良い方向に向かうのか、それとも戦争への危機が再び訪れるのか、誰にも分らないが、そのカギとなるのが、米朝間の「信頼」醸成ができるかどうかだ。

 両国の不信の関係には長い歴史があり、お互いが、「相手は過去に何回も自分を裏切った」と思い込んでいる。ゲームの理論などを持ち出すまでもなく、素人的な感覚でも、この両者の間に信頼を醸成するのはほとんど無理だという結論になるだろう。ニュースの街頭インタビューを見ていても、北朝鮮は信用できないという市民の声は非常に多い。

 しかし、「特別な環境変化」が原因で、今回は相互に協調行動をとる可能性が生まれるはずだというのが私の見方だ。どういうことか。

 これまでの北朝鮮との交渉では、失敗すれば、仕切り直しで、時間をかけてまた次のディールをするというのが前提だった。しかし、北朝鮮が核とミサイルを開発したことによって、この取引の前提条件が崩れた。今回は失敗すれば核戦争になり、双方が破滅するという、言わば、本物のチキンゲームに変質した。それを理解すれば、これまでの取引の履歴はいったん「リセット」して、もう一度、破局を避けるための協調行動を模索するというステップに入ることができるはずだ。損得勘定で論理的に考えれば、それしか双方が生き残る道はないということがわかる。それを前提にして、このタイミングで米朝交渉が実現したのは、トランプ大統領が、ビジネスマンとしての「直感」で、また、金正恩委員長が独裁者の自己防衛本能で、今がその転換点だということを察知したということだろう。もし、これから始まる交渉の中で、米朝間に最終的に強い信頼関係が醸成されれば、本物の妥協が成立することになる。

■安倍政権は「環境変化」についていけない

 日本では、北朝鮮の歴代トップは悪の権化だという強いイメージが定着している。特に安倍政権は、北朝鮮が核兵器とミサイルを保有するのは、武力で韓国を併合したり、日本に先制攻撃を仕掛けてくるためだと本気で信じ込んでいるようだ。つい2月ごろまでは、今にも北からミサイルが飛んでくるという宣伝を一生懸命行っていた。しかし、この考え方は根本から間違っている。 

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古賀茂明

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古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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