「世のなかが混沌(こんとん)としていて、世界が激しく動いていたのに、私は判で押したような毎日を過ごしていた。だからこそ『俺は何をやらなきゃいけないんだ?』って将来を冷静に考えられた時期でもありました」

 もちろん、本分である勉強にも励んだ。駿台での授業のほか、寮では毎日、授業の予習と復習を繰り返した。

 1年後、中村さんは慶應義塾大学に合格。ESS(英語研究会)に入部して英語劇に出演したことから、演じることに興味を持ち、俳優を志すようになった。中村さんにとって駿台で過ごした1年間は、自分自身の認識を変える大きなきっかけになった。

「宮城県の田舎にいたころは、ちょっと頭がよくてスポーツができる優等生だったのに、駿台に入学したら『普通の学生』になってしまった。寮生の半分くらいが東京大学に進学するほど、優秀な人が大勢いた。そんな環境では『普通』になってしまうのも仕方がない。でも、駿台の仲間たちから刺激を受けたからこそ、『頑張ろう』という気持ちになれました。それこそが駿台でしか味わえない環境なんだと思います」

(文・吉川明子)