「頭に来てもアホとは戦うな」

 時間もエネルギーもタイミングも、たった一度の人生を思い切り謳歌するための、限られた財産だ。それを「アホと戦う」というマイナスにしかならない使い方で浪費するな。

 そう断言するのは、元政治家であり、現在はシンガポール・リークワンユー政治大学院で教鞭を執る田村耕太郎さんだ。著書『頭に来てもアホとは戦うな』(朝日新聞出版)では、アホと戦うことの不毛さ、無駄さを説いている。田村氏が明かす、アホと戦ってしまう人の特徴とは?

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 アホと戦う可能性がある人物の特徴として、次の5点が挙げられる。

・正義感が強い
・自信にあふれる
・責任感が強い
・プライドが高い
・おせっかい

 心当たりのある人も多いと思うが、どういうことなのか、一つ一つみていきたい。

■正義感が強い

 正義感の強い人とはどういう人か。物事を判断するときに善悪を最上位に置いている人のことだ。時代劇を見すぎて育った私がその代表だった。正義感を持つ根拠は、最後は正義が勝つと思っていることだ。

 おてんとう様は見てくれている。どこかからスーパーマンやアイアンマンが飛び出してきて助けに来てくれる。自分はヒーローである。水戸黄門が風車(かざぐるま)の弥七(やしち)を先導して助けに来てくれる。大岡裁きが悪を何とかしてくれる。

 学生時代まではこの感覚で許されるかもしれないが、現実社会に出てからは考え直したほうがいい。どうやらどこにも超人的ヒーローが現れて、正義の鉄槌(てっつい)を下してくれる事例はなさそうだからだ。

 アメリカでは有能な弁護士を雇う資金力があれば、どんな犯罪でも有利な判決に持っていけるといわれる。つまり、ある意味、お金で正義が買えるともいえる。インドやインドネシア、ロシアに行けば、いまだに交通違反のもみ消しをするときや、ビザの取得等の官僚の仕事を有利にするときなど、チップのように賄賂(わいろ)を要求される。

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