私は、小さい子をもつ親が働くのに反対でも賛成でもなく、すべての選択は個人の自由だと思います。専業主婦として子育てに専念するのも素敵なことですし、専業主夫が増えているのもまた新しく始まってきた家族のあり方でしょう。ただ、もし働きたいと思ったときに、社会にその選択の自由が用意されているか、つまり体制が整えられているかというと、まだ難しい点は残っているとは思います。会社が「子どもを連れてきていいよ」といって、託児スペースやスタッフなどを整えてくれているなら、送り迎えや緊急時の安全を考えてもベストでしょう。現に、女性が多い職場ではそうした会社も増えているようです。

 ただ、子どもを産んだ時点で、仕事を含め生活全般が、以前と同じようにストレスフリーにいくかどうかというと、そうはいかないものです。以前は気軽に見にいけた映画だって、子どもがいれば難しくなります。本を読んだり、気軽にコンビニに行ったりする、時間や行動の制限も多くなってきます。

 そういう点を考えると、緒方議員がどういう意味で「子どもと一緒に議会に出席したい」と言ったのかは気になります。もし本当に物理的に「赤ちゃんと一緒に働く社会を」と考えているなら「ちょっとどうかなぁ」と思うのです。

 オーストラリアの規則も「手短に世話をすること」と書かれている点がひっかかりますよね。私の仕事の打ち合わせは、ケーキや紅茶と一緒にまったりと進めるようなゆるいものが多いですが、絶対息子は連れていきません。なぜなら、小さな子どもは、あちこち動きまわってすぐどこかへ行こうとして、ママのお膝にいてもお利口30分でさえ座っていられないからです。机の上にあるものを手当たり次第触るし、なんでも舐めるし、ゴミでも消しゴムでも口に入れようとするし、とにかく目が離せず、とても集中できる状態ではありません。ゲーム「ドラゴンクエスト」でいえば、レベルを上げた魔法使いぐらいの賢さをもっていたとしても、小さな子どもを抱えていたら、混乱して仲間に攻撃するスライム程度の思考力になるでしょう。

 そして赤ちゃんによる行動は、当たり前ですが周囲にも影響を及ぼします。隣の人のノートに落書きを始め、大切なメモをグチャグチャに丸め、話しているときに大声で泣き、大迷惑をかけます。周囲と赤ちゃんを気にして、精神的な消耗が半端ないというのに、打ち合わせも普段より質の悪いものしかできない……、まして緒方議員の場合、市民の生活を考えるための会議、話し合いをする仕事なわけです。もしスライムレベルの雑魚パワーしか出せなかったら、議員でいる意味はないと思うのです。

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「もう少し捻ってよ緒方議員」