そして、彼ら以上に文句なしで“成功”と言えるのが、大田泰示(巨人日本ハム)だろう。プロ9年目で初めて規定打席に到達し、118試合出場で打率.258、15本塁打、46打点。「まだまだやれる」はずだが、これまでくすぶっていたことを考えると移籍は正解だった。同じく巨人からトレード加入した公文克彦(巨人→日本ハム)も、中継ぎで41試合に登板し、プロ初勝利を含む3勝0敗、防御率2.70と奮闘。まだ25歳で来季以降の“成功”も大いに期待できる。

 また、指導者打診を拒否して現役続行を選んだ田中浩康(ヤクルト→DeNA)も成功と言える部類。持ち前の小技と守備力の高さで代打、守備固めなど66試合に出場。打率自体は.201と高くはなかったが、7月には通算1000安打も記録し、数字以上の貢献度の高さがあった。同じくコーチ打診を断って自由契約となった大松尚逸(ロッテ→ヤクルト)も新天地でいぶし銀の働きを披露。シーズン2本の代打サヨナラ本塁打を放つなど、計94試合に出場して打率.162、3本塁打、16打点。ケガで1軍出場がなかった前年からの復活を果たした。その他、黒羽根利規(DeNA→日本ハム)は新天地で出番を得て1軍19試合に出場。FA組の細川亨(ソフトバンク楽天)は出場20試合にとどまったが、豊富な経験で投手陣の底上げに貢献した。人的補償選手の金田和之(阪神オリックス)は1軍34試合に登板してステップアップ。久保裕也(DeNA→楽天)はリハビリ専念のために来季は育成契約からのスタートになるが、今季は27試合に登板して3勝1敗、防御率3.60と結果を残した。

 一方、シーズン途中の7月に交換トレードとなった屋宜照悟(日本ハム→ヤクルト)、杉浦稔大(ヤクルト→日本ハム)は、ともに目立った成績を残せず。トレード成立期限日に日本ハムから中日に移籍した谷元圭介も、新天地で18試合に登板したが防御率6.00と安定感を欠いた。また、心機一転の飛躍が期待された小山雄輝(巨人→楽天)も5試合で防御率11.12と振るわず。FA補償でDeNAに加入した平良拳太郎(巨人→DeNA)は、計4試合に登板してプロ初勝利を挙げたが、1勝3敗、防御率7.07と課題を残した。さらに柳瀬明宏(ソフトバンク→阪神)、榎本葵(楽天→ヤクルト)、猪本健太郎(ソフトバンク→ロッテ)、柴田講平(阪神→ロッテ)といった面々は2年連続の自由契約。移籍をキッカケに再起を図ったが、結果を残すことはできなかった。

 移籍を機に飛躍を遂げた選手がいる中、結果が出なければ容赦なく批判を浴び、チームを追われることにもなる。プロの世界の厳しさを思い知らされるのが「移籍」である。今オフ、その決断を下す選手たち。彼らの“成功”を、是非とも期待したい。