人口200万人を超える巨大都市、名古屋。「きしめん」や「ひつまぶし」など広く知れ渡る食文化がある一方で、「最も魅力がない街」などと報じられることも、しばしば。だが、名古屋圏には全国屈指の強みもある。そう、尾張名古屋は医学部でも「もつ」のだ。アエラムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる』では現地を訪ね、その理由を探った。
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医学部への意識の高さを表す、こんなデータがある。
河合塾入試結果調査データによると、2008年度入試の愛知県全体の国公立大前期日程における受験者数は、1万3224人。うち、医学科の受験者は584人で、占有率は4.4%。これに対し、16年度の受験者数は1万5287人。このうち医学科の受験者数は771人で、占有率は5.0%と増加している。
「愛知県の高校が医学部に強い理由としてまず挙げられるのが、東海高校の存在ですね」
河合塾名駅校医進館の奥村高志校舎長は、力強くそう話す。東海高校は、私立の中高一貫校。08年度に国公立大医学部の合格者数が83人で全国一になって以来、灘(兵庫)やラ・サール(鹿児島)などの強豪校を抑えて9年連続でトップに輝いている(大学通信調べ)。09年度から16年度までの合格者数は95人から114人の間で推移している。奥村校舎長が言う。
「医学部を目指す生徒が集う『医進館』には、東海高校の生徒さんも多いのですが、もともと医者のご子息が多い高校なので、親が医者ではない生徒も触発されて医学部を目指すケースが多いようです。東海高校は男子校なので、私学志向の成績優秀な女子は南山高校女子部や共学の滝高校に通います」
また、医学部専門予備校メディカルラボ名古屋校の可児良友校舎長の指摘は、こうだ。
「本校には比較的近い三重県、岐阜県からの生徒もいますし、新幹線で30~40分の静岡県浜松市から通ってくる生徒もいます。200万人都市の名古屋には高校も塾も多く、教育環境が整っています。このため、成績上位の生徒が医学部を目指しやすいのだと思います」
名古屋駅から徒歩数分の場所に河合塾名駅校医進館、メディカルラボ名古屋校ができたのは、ともに06年。東海高校の国公立大医学部合格者数をみると、05年度は64人で全国3位だったが、08年度以降、9年連続でトップを独走している。医学部受験に特化した塾・予備校ができたことも、東海高校の躍進に関係しているのかもしれない。