これは、何も医師に限ったことではありません。仕事の優先順位を考える際、最も重要な案件を可能な限りベストパフォーマンスを出せる時間帯に組み込むことができるかどうかは、結果を大きく左右します。そして、極端な「夜型」を自覚している人以外は、その時間帯は午前中である可能性が高いのです。

●20分の「仮眠」が患者の生死を分ける

 本来あってはならないことですが、かつて私は、前日までの疲労が溜まって、手術前に「とてもベストパフォーマンスを出せそうもない」と感じた時もあります。

 そんな時、私は勇気を持って「20分ほど仮眠させてくれ」と周囲にお願いすることがありました。手術中に眠気に襲われて大事故を起こすより、ほんの少しの仮眠による回復効果を狙うのです。これは、20分の経過が患者の病状に与える影響を計算しつつ、自分のパフォーマンスを一定以上に保つための回復に充てる、というギリギリの判断です。

 医師のパフォーマンスの低下は、患者の「死」に直結します。できる限りのコンディションを整えることは、外科医として、執刀技術と同じくらい重要なファクターです。

 そしてこれも、医者に限ったことではありません。眠気を取り去り、午後のパフォーマンスを落とさないための「仮眠」は、結果を求められるビジネスパーソンにとっての大きな武器になります。

 仕事中の仮眠は不謹慎だという人がいますが、疲れた体と頭で仕事を続けてパフォーマンスを下げるほうが、プロとして不謹慎ではないでしょうか。少なくとも私は、「不謹慎」かどうかよりも、手術でパフォーマンスを保てるかどうかを優先していました。

 ちなみに、ビジネスパーソンがどのように仮眠をとるべきかについての現実策と、「20分の昼寝」が最強である科学的な理由については、拙著『一流の睡眠』に詳しく紹介していますので、是非お役立てください。

●一流は「夜」から1日をスタートさせている

 ベストの状態で手術に臨むためには、前日の睡眠が非常に重要な役割を果たします。私は、よく言われる「一流のビジネスパーソン」を、「常に一定以上のパフォーマンスを出し続ける人」と定義していますが、外科医として「一流でなければならなかった」私が、睡眠に関して心がけていたことがあります。

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