「一流の睡眠」その基本的な考え方とは?
「一流の睡眠」その基本的な考え方とは?

 医師×MBA×経営者のトリプルホルダーで、ビジネスパーソン両方の視点と経験を併せ持つ著者が、発売まもなく増刷を重ねる大好評の新刊『一流の睡眠』から、現実的かつ具体的な「睡眠問題解決法」を教えます。

 今回は、「仕事がデキる人」と「睡眠」の関係を明かします。

●絶対に失敗できない「外科医」という仕事

 私はもともと、胸部外科という肺や心臓などの臓器を専門とした外科医で、これまで経験してきた手術回数は500回を超えています。

 外科医は、1日の中で複数の手術を担当することが珍しくないハードワーカーです。私自身も、最大で1日に4件の手術を担当したことがありました。

 手術室に運ばれてくる患者さんの病気や症状は、当然ながらすべて異なります。肺がん、縦隔腫瘍(胸の真ん中の臓器に出来る腫瘍)、気胸(肺に穴が空き、胸の中に空気が漏れる病気)、膿胸(胸の中に膿がたまる病気)など、さまざまです。

 病気に至った原因や背景も、まさに十人十色。ご高齢で手術に耐えられるかどうかギリギリの状態の方、過去に心筋梗塞の経験があって心臓が弱っている方、重度の喘息持ちで呼吸機能が悪い方、本当に多種多様です。

 そして、手術に失敗は許されません。常にベストパフォーマンスを求められるプレッシャーと戦い続けなければなりません。

●重篤な患者の手術を「朝イチ」に組み込む2つの理由

 そうした個別に状態の異なる患者さん一人ひとりをつぶさに観察しながら、慎重に手術の順番を決めていきます。そのような状況の中、最もリスクが高く、かつ難しい技術が求められる患者さんの手術は、必ず朝イチにスケジューリングしていました。

 その理由は、一刻を争う手術を優先する、という患者側の緊急度が1つ。そして、手術でベストパフォーマンスを出しやすい環境が朝である、という医師側の理由が1つです。

 午前中は体力が十分に残っており、脳の疲れもなく、アドレナリンが分泌されやすい時間帯です。夕方の別の手術で手を抜いているようなことは100%ないと断言しますが、それでも、朝イチのほうが心身ともにベストの状態で臨める可能性は高いのです。

 たとえば、肺がんの手術は一般的に3時間ほどかかります。術前の準備や麻酔等を入れれば、朝の8時から13時くらいまで立ちっぱなしで頭をフル回転させて集中しなければなりません。頭も体もベストな状態でなくては、とても乗り切れないのです。

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