■「無利息ですよ!」はサラ金の常套句
これだけ入り浸る顧客で勝ち続けるものはごく少数かもしれない。負けた者の多くは、途中で帰るはずだ。しかし、その中には一定数、止められなくなるものがいることをカジノ業者は熟知している。手持ちの現金が尽きた時、「無利子のチョイ借り」の誘惑が待っている。
今回の法案では、カジノ業者が資金を貸すことを認めた。競馬や競輪では認められていない禁じ手だ。一方で利息を取ることは禁じた。素人は、それは厳しい規制だと思うかもしれない。しかし、それは全く逆だ。私の経験では、利息が高ければ、借金を思いとどまる人でも、利息なしなら、と借りてしまう人は案外多いのだ。
さらに法案では、貸付期間は2ヵ月までと書いてある。ちょっと立て替えてもらうという錯覚を起こさせる期間と言って良いだろう。しかし、その後にはとんでもない落とし穴が待っている。2カ月経過すると、いきなり年率14.6%の違約金が発生するのだ。利息制限法では、100万円以上の場合の上限が15%だから、上限ギリギリの「高利貸し」になり、5年強で借金は2倍になってしまう。
さらに問題なのは、この「高利貸し」には貸金業法による貸付金額の総量規制が適用されないことだ。貸金業では、債務者の年収の3分の1を超える貸し付けは禁止だ。他の貸金業者に対する借金も併せて3分の1である。したがって年金生活者の場合、借金の残高が1年間の年金収入の3分の1になったところで貸し付けはストップする。しかし、カジノ業者の場合は、この規制がないから、前述のとおり、数千万円の貸し付けも可能となる。
気の毒なのは、その家族だ。若い頃からこつこつ貯めて、持ち家も持って、これから余生を楽しもうという比較的恵まれた人たちが、いきなり数千万円の取り立てを受け、家を無くし、蓄えも無くす。一気に貧困者に転落するのだ。
法案では、本人や家族の申告で、入場拒否対象にしてもらうことができるが、依存症になっている本人はそんなことはしない。また、家族も、気づかなければそういう申し出をすることができない。