ここで問題となるのが、カジノ業者の貸付だ。もし、現金でしかチップを買えないことになっていれば、資金が無くなるたびに銀行から預金を下ろす必要があり、家族が気付くチャンスもあるだろう。しかし、借金しながら賭け続け、その後違約金も含めて、業者が目標金額に届くまで取り立てに動かなければ、家族は気付きようがない。そして、とりっぱぐれ寸前の段階で、いきなり数千万円の借金の取り立てがやってくる。
こうしてみると、資産のない金に困った人が顧客の中心である通常の貸金業とカジノ事業者が行う不動産や貯金を保有する人を対象とした「特定資金貸付金契約」(カジノ法案ではこう呼んでいる)とは、全くの別物である。1件当たりの被害額では、後者の方がはるかに大きいのである。
■海外マフィアと日本の警察のどちらが強いか?
今回の法案には、以上の他にも、カジノ面積規制のまやかし、カジノを監督する管理委員会のまやかし(カジノ事業者が委員になること)など“地雷”になる条項がたくさん盛り込まれている。
さらに驚くべきは、法案に条文として記載されず、法成立後に政令などで定める条項が先に述べた預託金の金額などを含めて331もあることだ。政令だから国会のチェックがなく、政権与党や内閣府、国交省など、カジノを所管する利権官庁が事業者とグルになって、カジノの運営ルールを決めるという仕組みになっている。
これらに加え、海外マフィアを日本に呼び込むリスクも高い。マフィアと言ってもアメリカ系、イタリア系 中国系、ロシア系などが入り乱れてやってくる可能性がある。これら海外の組織的犯罪グループと日本の警察のどちらが強いのか、よく考えてみるべきだ。安倍総理はトランプ大統領に頼んで、アメリカFBIに日本支店を作ってもらうつもりだろうか。
問題だらけのカジノ法案は、一度廃案にして、そもそも刑法で犯罪とされている賭博を大々的に解禁する理由が本当にあるのかどうか、あらためて考え直さないと、大変なことになるのではないか。「後悔先に立たず」とはこういう時のためにある言葉だと思う。