亡くなった船戸結愛ちゃん
亡くなった船戸結愛ちゃん
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船戸雄大容疑者(c)朝日新聞社
船戸雄大容疑者(c)朝日新聞社

 東京目黒区の船戸結愛ちゃん(5)が虐待を受けて死亡した事件で27日、東京地検は保護責任者遺棄致死の罪で父親の船戸雄大容疑者(33)と母親の優里容疑者(26)を起訴した。幼い子どもを守るためには、どのような対策が必要なのか。ジャーナリストの小林美希氏が緊急提言をする。

【写真】起訴された父親の船戸雄大容疑者

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「あしたはできるようにするから もうおねがい ゆるして」
 
「あそぶってあほみたいだからやめるので もうぜったい、ぜったいやらないからね」
 
 東京都目黒区で父親から虐待に遇い死亡した船戸結愛ちゃんがノートに綴っていた言葉に、多くの人が心を痛めただろう。朝4時に起床し、父親から平仮名の練習をするよう厳しくしつけられ、満足な食事をさせてもらえず、死亡した時の体重はわずか12.2キロ。結愛ちゃん一家は今年1月に香川県から東京都に転居していたが、香川に住んでいたときから虐待が疑われていた。そのため、香川県と東京都の2つの児童相談所が対応していたが、最悪の結末を迎えたことで両者の連携に問題があった可能性も指摘されている。
 
 児童虐待が疑われる「ハイリスク案件」の対策として、児童相談所の機能強化が叫ばれている。ただ、人的資源が限られている児童相談所で虐待が疑われるすべての子どもを保護することは困難なのが実情だ。そこで重要となるのは、子どもが保育所に通っていることだ。
 
 結愛ちゃんの場合、報道によると幼稚園にも保育所にも通っていなかったとされる。しかし、もし、結愛ちゃんが保育所に通っていれば、保育所にいる間だけでも遊び、食事ができただろう。もし、父親が保育士から「子どもは遊びから学んでいる。まだ字が書けなくたって大丈夫」と言われていれば、育児のあり方が変わっていたかもしれない。虐待の兆候があれば、警察にもっと早く通報されていたかもしれない。
 
 中国地方のベテラン保育士は「私たちは、子どもの育ちを見る時に親も一緒にみなければならない。家で過ごすよりも保育所に来たほうがいい家庭環境の子もいる」と話す。九州地方の園長は、「子育てに悩む保護者は多い。保育士はソーシャルワーカーの役割もある」と、朝夕に園長も必ず保護者に挨拶して回り、保護者の表情を見て気になる場合には声掛けをして子育てや保護者自身の悩みの相談に乗っている。
 

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虐待防止には保育所にも課題