藁ぐらいにしか思えないカウンセリングにおいでになっているのは相当に手詰まっているのだろうな、と思いながら、
「つまり、どうにか美樹さんの気持ちを変えたいということですか?」
とお聞きすると、
「変えたいというか……。もちろん無理やり変えたいっていうわけではなくて、私の真意を分かって欲しい、ということです」
と言います。玉虫色の話は問題を解決する力がないので、ちょっとかわいそうですが、はっきりさせます。
「貴方の真意は分かりました。それはそれとして離婚します、でいいわけじゃないですよね?」
というと、ちょっとムスッとしながら、こうおっしゃいました。
「そういう意味では、最終的には、変えたいってことになるのかもしれませんけど」
妻の美樹さんにも話をお聞きします。
「この人が、ずっと離婚、離婚と言っていて、ようやく私も離婚でいいと思えるようになったから同意したんです。だからさっさと離婚してほしいんです」
と、けんもほろろです。
「さっきもいいましたけど、本心で言ってたわけじゃないんです」
と、雅造さんは割り込みます。美樹さんは不機嫌そうに黙ってしまいました。美樹さんが何かを言うと、雅造さんがそれに反論や説明をするために話を遮ってしまい、結局美樹さんは黙ってしまうというのが、お二人のうまくいかないコミュニケーションのパターンです。同じパターンでやりとりする限り、同じ結末を迎えることになります。
「どう感じますか?」と美樹さんにお聞きしました。
「1回や2回じゃないんです。何回も何回も何回も何回も言ってきたのに、それが本心じゃないなんて信じられるわけないじゃないですか!」
と、美樹さんが言うとすかさず、雅造さんが
「それは申し訳……」
と言い始めましたが、うまくいかないパターンなので制止し、美樹さんにいいます。
「何回も何回も離婚って言われて、辛かったですよね」
と聞いてみました。