個人的な作品として楽しむ程度なら問題はないが、SNSで紹介し、ネットで拡散されてしまったときに、予期しない問題に発展することもある。
たとえば、この広告のモデルや撮影した写真家がSNSで写真の存在に気づき、「著作権侵害だ」「広告の世界観を損なうような撮り方をされた」などと、撮影者にクレームをつけてくるかもしれない。
「権利侵害のリスクを過剰に強調して、『撮影しなければ安全』と言うのは簡単です。しかし撮影者が過度に萎縮してパロディーなどの二次著作物の文化が発展しなくなるほうが大問題だと思います。このような文化を社会として大切にすることの重要性も考えるべきではないでしょうか」
【ケース2 個人の住宅や私有地公道から全体は撮れるがプライバシーに配慮を】
散歩をしているときに、スタイリッシュな外観の個人宅を見つけた。家の前には外車と立派な樹木もあり、絵になりそうではある。しかし、個人の家となると、やはり撮影はできないものだろうか?
「公道から撮影するぶんには問題ありません。著名な建築家が造った建築物であっても、公道から目につく場所に存在している以上、外観の撮影自体を禁じることはできません」
極端な話、所有者が外観を見られたくない、撮影されたくないというのであれば、高い塀で囲むなり、広大な敷地の真ん中に建てて外から見えないようにするしかないということなのだ。
ただし、いくら公道から撮影してもいいといっても、ベランダに干された洗濯物や、ガラス越しに見える室内の様子などを寄りで撮影するのは、所有者のプライバシー侵害に当たるので注意が必要だ。
数年前、グーグルストリートビューの撮影画像がプライバシーの侵害かどうかが問題となった。現在、グーグル社では、表札や車のナンバープレート、個人のプライバシーを侵害している可能性のあるものにはぼかしを入れ、写真のぼかし加工または削除リクエスト窓口を設けるなどの対応を行っている。