「ストリートビューは車の上にカメラを搭載し、公道をゆっくり走行しながら撮影しているため、本来は外から見えない家の中などが写りやすくなっているかもしれません。ただ、公道から人の目線で見たり、撮影したりするぶんには問題ないと考えます」
【ケース3 神社仏閣の建物や敷地内の撮影可否も施設管理者しだい】
全国各地に点在する神社仏閣。歴史的な建物が多く、自然に囲まれているため、一年を通じて撮影スポットとして安定的な人気がある。
それだけに京都などの有名な神社仏閣では、〈三脚の使用禁止〉など、独自のルールを設けているところが多い。
「神社仏閣の敷地内での撮影ルールを決めるのは管理者になります。これも施設管理権の一環です」
施設管理者は、〈本堂は撮影禁止〉〈芝生内は立ち入り禁止〉〈ストロボ撮影禁止〉といった細かいルールを設定することができる。
昨年11 月には東福寺(京都)が紅葉の見頃となる時期のみ、事故防止と混雑緩和のため、境内の通天橋と臥雲橋での撮影を初めて禁止したことが話題となった。近年、写真を撮るために橋の上で立ち止まる人が増え、行列が動かなくなることに対する措置だ。
ところで、ある寺で敷地の外から大きな仏像が見えている場合、これを公道から撮影してもいいのだろうか?
「カフェテラスのケースで、公道から撮影した場合でも『店の権利妨害になりうる』と指摘しました。でも外から見えるような仏像の場合、仏像自体の著作権は仏師の死後50年以上が経過していればありませんし、管理者が持っているのは所有権だけになります。それだけでは管理者は『公道からも撮らないで』と言う権利はないんです」
境内にある樹齢を重ねた樹木を公道から撮影する場合も同様だ。管理者には所有権しかなく、たとえ丁寧に手入れをして剪定していたとしても撮影を禁じることはできない。仏像も樹木も、敷地内であれば話は別であり、「撮影禁止」などのルールを独自に設けることができる。
◯三平聡史(みひら・さとし)
みずほ中央法律事務所代表弁護士。同事務所のホームページでも撮影と法律に関するコラムを執筆している。
(文・吉川明子)
※アサヒカメラ特別編集『写真好きのための法律&マナー』から抜粋