カメラを持って街に出ると、さまざまなシャッターチャンスにあふれている。しかし、レンズの先にある被写体や街の風景は、撮影しても法的に問題ないのだろうか? 「撮影禁止」という表示は守らなくてはいけないのだろうか? 発売中のアサヒカメラ特別編集ASAHI ORIGINAL『写真好きのための法律&マナー』から、改めて街中で写真を撮ることについて、みずほ中央法律事務所代表弁護士の三平聡史さんが具体的なケースを基に解説する。
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【ケース1 街にあふれる屋外広告そのまま撮るのはNG SNS拡散も要注意】
街には女優やアイドルが笑顔を浮かべる看板や、キャラクターを大きくあしらったポスターなど、さまざまな広告が掲げられている。これらがスナップ撮影をしているときに写り込むのはよくある話だ。
「もしあるタレントが出ている広告のポスターを寄りで撮ったとします。これはタレントのパブリシティー権や、広告を制作した会社の著作権、タレントを撮影した写真家の著作権侵害になります。ただし、街の風景の中の一つに広告が写り込んでいたというケースであれば、著作権やその他の権利の侵害には当たりません」
それでは、巨大な壁面広告の前をたまたま女性が歩いていて、その瞬間が絵になると感じてシャッターを切った場合はどうなるのだろうか? こうした構図の写真は、広告写真と現実の女性の交差する瞬間が面白いのであって、どちらかが欠けても成立しない。
「まず、広告の前を歩いている女性の肖像権について考えてみましょう。顔がアップで写っているわけではありませんし、歩いている瞬間で横を向いているのであれば問題はありません。次に広告写真ですが、こちらは広告を撮影した写真家の著作権が関係してきます。ただ、こうしたスナップ写真ですと、形式的には違法となる可能性はありますが、二次著作物として尊重され、違法ではないと判断される場合も多いでしょう。ただし、この写真をポストカードや写真集にして販売するなど商用利用となれば、著作権者の許諾が必要になります」