白土教授は「重さには教科書のページ増と大型化が影響している」と指摘する。
教科書協会によるとは、いわゆる「ゆとり教育」期の05年に比べ、「脱ゆとり教育」転換後の12年の教科書の総ページ数(1~6年合計、各社平均)は小学校で34.2%増えた。同様に中学校でも学習指導要領の変更前後で34%、高校で21%増えている。
■登山リュック状態の学生カバン 医師「腰痛や肩こりの一因に」
教育者の陰山英男さんは、12年前後から問題提起をしてきた一人だ。
「ページ数が増えただけでなく、上下巻が1冊にまとまり、ビジュアル化・カラー化によりB5版がA4版になるなど大判化し紙質が良くなっています。ランドセル自体は軽量化していても、容量が増えたくさん詰められるようになり、全体の重さは以前の倍以上になっているはずです。部活動が始まる中学生の荷物は登山リュック状態で、一昔前に使われていた薄型で革製の学生カバンではまったく太刀打ちできません。しかし、こういった現状がまったく把握されていない。ページ数を増やせば学力が上がるというものではなく、教科書の難化が教師や子どもたちの負担を強いています。これは相当深刻な問題です」
体への影響はあるのだろうか。東京・世田谷で小児整形外科を持つ、たかの整形外科の高野勇人院長は
「成長期の子どもたちが重い荷物を背負うことによって、本来は伸びるべき身長よりも抑えられたり、背骨のS字カーブが変わり、腰痛や肩こりを起こしたりする一要因には十分になり得る。海外の研究でも、荷物は体重の10%程度が適切だとされている」
と指摘する。
教科書が巨大化しても学校の指導は変わらず、“置き勉”(学校に教科書を置いて帰ること)禁止が一般的だ。
その理由を尋ねると文部科学省は「各学校が判断し指導している」と回答。都内のある小学校の校長は、音楽や図画工作のような技能教科に使う道具は教室のロッカーに保管できるが、国語や算数といった主要科目は毎日宿題が出るため持ち帰るよう指導していると話す。