そして、そもそも卒業式の記念品やコサージュの費用を、PTA予算から出すという決まりはない。一番いいのは、自治体(教育委員会)で予算をつけ、公費で購入することだろう。実際にそうしている自治体もある。
あるいは、卒業対策費や学年費などの学校徴収金として学校が集める方法もあるし、実際にそうしている学校もある。これは学校長が判断すれば、すぐに可能なことだ。
なお、PTA会費を学校徴収金の一種と勘違いする人もいるが、これは間違いだ。PTA会費はPTAという団体の会費なので、払う人と払わない人がいて当然であり、全員が払うことになっている学校徴収金とは、根本的に位置づけが異なる。
では、前回の記事で紹介した、「コサージュ代はPTA予算から出し、非会員家庭の子どもにはあげない。ただし、実費を払えばあげる」というやり方はどうだろうか。
「過渡期」の対応としては、理解できなくはない。「PTA=全員が強制的に必ず加入するもの」というかつての認識から、「PTA=入りたい人が入り、やりたい人がやるもの」という認識にようやく移行するいま、非会員家庭の子どもにタダでコサージュをあげることを「ズルい」と感じ、苦情を言ってくる保護者もいるのは事実だ。やむを得ず一時的に、このような対応をとるPTAを一概に責めることはできない。
ただし、このやり方をデフォルトとして定着させるのは、やはりよくないと思うのだ。これを「当たり前」にすれば、「やっぱりPTAは、会員家庭向けにサービスを提供する団体なんだね」と認識され、すると冒頭にあげたような「非会員家庭の子どもは、運動会のテントや登校班、PTA主催行事から除外していい」といった話にもつながりかねない。
以上のような考えから、筆者としてはやはりこれは「間違った対応だ」と言っておきたい。PTAは子どもに分け隔てなくサービスを提供するのが基本だし、もしそれができないなら、PTAはそのサービスから手を引くのが一番だろう。(文/大塚玲子)
大塚玲子(おおつか・れいこ)/PTAや家族などをテーマに取材を続けるライター、編集者。全国各地で行う講演会「PTAをけっこうラクにたのしくする方法」も好評。著書に『PTAがやっぱりコワい人のための本』など