子どもに分け隔てなくサービスを提供できないなら、PTAはそのサービスから手を引くのが一番だろう(※写真はイメージ)
子どもに分け隔てなくサービスを提供できないなら、PTAはそのサービスから手を引くのが一番だろう(※写真はイメージ)
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「『あなたがPTAをやめるなら、お子さんは運動会のテントに入れなくなりますよ』って言われたんです。子ども席のテントはPTAの予算で購入したから、って。朝の集団登校にも、PTA主催の行事にも、うちの子だけ参加できなくなるし、卒業式の記念品ももらえなくなる。『それでも、やめるのか?』って聞かれました」

 数年前にPTAを退会した、ある保護者の男性の話だ。「それって、PTAをやめさせないための脅しじゃない?」と驚いた人もいるかもしれないが、ちょっと前まで、こういった話は全国的によく聞かれた。

 日本では長いこと「PTAは、保護者全員入るのが当たり前」とされてきた。「PTAに入らないことは許されない」という風潮があり、「非会員家庭の子どもは会員サービスを受けられなくて当然」とする対応は決して珍しくなかったのだ。

 しかしここ数年で、状況はだいぶ変わりつつある。PTAは任意加入の団体であり、「加入意思を確認せずに、保護者を自動的に強制加入させるいまのやり方は、法的に問題がある」ということが、広く知られるようになってきたからだ。

 そのため、ここ1~2年は、非会員家庭の子どもに対する差別をあまり聞かなくなってきた。少なくとも、以前ほど露骨なものは減っていると感じる。

 しかし、それでもまだ「PTA予算で買っている入学式や卒業式のコサージュは、非会員家庭の子どもにはあげられない」としたうえで、「ただし別途、実費を徴収できた場合には同じものをあげる」といった、微妙な対応をとるPTA・学校も多い。

 前回の記事(『「#PTAやめた」で嫌がらせも 法改正後初めての新学期に現場から悲鳴』)で、筆者がこれを「間違った対応」と書いたところ、コメント欄には「間違ってなどいない、当たり前の対応だ」とする意見が多く寄せられた(※記事が転載されたあるニュースサイトでは2000件を超えるコメントが書き込まれた)。

 だが、筆者はやはりこれを「当たり前の対応」とするのは違うし、危険だと感じる。

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PTAは何のためにあるのか?