第2次安倍内閣が発足してから5年が経過した。内閣人事局ができて、官邸が官僚人事を握ったこともあり、安倍政権が完全に官僚を意のままに操り、官僚は安倍官邸の意向を「忖度」している……。
これが多くのマスコミが報じる安倍政権下での政権と官僚の関係である。
しかし、官僚生活を31年間経験した私の目にはそんなに単純な絵は見えない。そこには、はるかに複雑な力関係がある。官僚は忖度、政権は懐柔の姿勢を見せながら、それらが同時に強烈な脅し合いにもなっている。実は、安倍政権はかなり追い詰められているという見方さえできるのだ。
官僚(といってもここで言うのはいわゆる国家公務員試験の1種試験に合格したいわゆる「キャリア官僚」のこと)の最大の関心事は北朝鮮問題でも働き方改革でもない。少子高齢化対策でも子育て支援でもない。ずばり言えば、天下りだ。自分の役所の天下りポストが維持できるのか、自らの退職後どんなポストに天下りできるのか。そこがすべての行動の原点になる。もちろん、それ以外にも関心事はあるが、天下り利権がどうなるかの方がはるかにプライオリティーが高い。
彼らの頭の中は、「日本で一番優秀な俺たちが朝から夜中まで国のために働いてやってるのに、民間のできの悪い奴らよりも給料が安い。だから退官後に天下りで悠々自適の生活が保障されるのは当然のことだ」という考えで凝り固まっている。
このような官僚たちの思考は、実は政治家も熟知しているし、中には官僚の理論を積極的に擁護する者さえいる。
■官僚利権擁護のシグナルを送る安倍政権
官僚と政治家のこうした頭の中を前提にして、昨年夏以降バラバラに報じられているニュースを一つの流れとして理解することができる。
その中で一番大きく報じられたのが商工中金不正融資スキャンダルとその後の民営化の議論だ。これは4大政府系金融機関の一つである商工中金が、危機対応融資という制度を悪用し、あろうことか業績の良い会社の業績を悪く見せかけ、超低利融資を行っていたという信じられないような事件だ(詳しくは2017年11月20日付の本コラム参照)。