さらに、時間は少し遡るが、官僚から見て非常に大きな人事があった。昨年夏の内閣改造に伴い、内閣人事局長が政治家の萩生田光一・前官房副長官から官僚出身の杉田和博官房副長官に交代したのだ。これもあまり報じられなかったが、実は、公務員改革の議論の中で最大のテーマとなった問題の一つである。それは官僚の人事の総元締めとして安倍内閣が創設した内閣人事局のトップを政治家にするのか官僚に委ねるのかという問題だ。官僚が握れば、官邸に対する官僚の擁護者となる可能性がある。安倍政権は当初政治家をここに置いた。それが、一転してそのポストを官僚に明け渡したのである。官僚から見れば、少なくとも理不尽な人事に一定の歯止めはかけられるのではないかという期待を抱かせるものである。

■官僚擁護が示す安倍総理の危機感

 官僚の人事といえば、今最大の関心を集めているのが、佐川宣寿国税庁長官の人事だ。財務省理財局長時代に森友学園問題について、最後まで、籠池泰典氏側との交渉の記録はない、あったものは廃棄した、だから何があったか知らない、わからないで貫き通した。このため、昨年夏に理財局長から国税庁長官(長官ポストは局長ポストよりも格が上で月額給与も10万弱高い)に昇進させた人事に対して野党や世論から強い批判を受けた。
もちろん、安倍首相から見れば、佐川氏の木で鼻をくくったような答弁は自分を守るためのものだから、その行為に対して責任を問うのはとてもできないという気持ちになったのだろう。

 しかし、こういう場合、普通は、燃え盛る世論をなだめるために、佐川氏に将来の処遇(超優良天下りポストの約束)を阿吽の呼吸で伝えたうえで、退官または、少なくとも官房付での待機というような処遇をするものだ。しかし、今回は、よりによって国民から税金を徴収する役所のトップに据えたのである。大きな批判を招くことを覚悟したうえでの決断だ。

 ここまで紹介した諸々のニュースを総合的に見てみると、安倍政権は官僚の利権、とりわけ天下り利権に関しては非常に寛容だということに気づく。天下り調査のずさんさ、商工中金で天下りを禁止しなかったこと、政府系金融機関トップへの天下り復活などは、非常にはっきりとそれを示している。
天下り以外でも、内閣人事局長ポストを官邸政治家から官僚に大政奉還したことも官僚に甘い政策だ。

 さらに、佐川長官人事は、極めつきの官僚擁護である。

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財務省と経産省の官僚が握るものとは