この問題を契機として、たびたび延期されていた商工中金の民営化を直ちに実行せよという議論が高まった。しかし、今年1月に出た経産省の有識者会議の結論は、「民営化の最終判断は4年後に先送り」という官僚寄りのものになった。もちろん、経産次官OBの安達健祐社長は更迭されることになり、後任はプリンスホテルの関根正裕常務執行役員となることが決まったが、経産省からの全ての天下りの廃止ということにはならなかった。最大の問題である天下り問題をスルーしたのだ。このため、社長は民間人に譲るものの、副社長またはその他の役員ポストが経産省に割り当てられる可能性が高い。これで4年後には、民営化はしない、あるいは判断をさらに先送りするという結論が出され、さらに、社長ポストも気づいてみたら経産省の次官OBが就いていたということになりそうである。

 実は4大政府系金融機関のうち、商工中金、日本政策金融公庫、国際協力銀行のトップが、第二次安倍政権で、民間人から財務省と経産省の次官級OBの天下りポストとして復活した。(残りの一つ日本政策投資銀行は引き続き民間人が社長を務めている)。小泉改革で天下りから民間登用に代わっていたのに、安倍首相はこれを官僚たちに大政奉還したのだ。その後、2016年に国際協力銀行のトップは再度民間人に戻ったので、財務省OBと民間人の交互登用が原則になるのかとも思われたが、17年12月25日には、政策金融公庫の総裁が元財務次官の細川興一氏から同じく元財務次官の田中一穂氏へと引き継がれ、財務省次官級OBの天下りポストとする路線がはっきりと示された。商工中金不祥事が燃え盛る中だったが、同じ政府系金融機関の日本政策金融公庫について、安倍首相は財務官僚の意に沿う人事を承認したのだ。ただし、残念ながら「忖度マスコミ」はこれをほとんど大きく報じなかった。

 さらに、ほぼ同時期の12月15日には、これまた官僚たちがほっと胸をなでおろすニュースがあった。

 文科省の前川前次官が退官させられる原因となった、同省の天下り不祥事事件を受けて行われていた、全省庁にわたる点検作業の結果が発表されたのだ。

 当初、「文科省の天下り規制違反摘発は加計学園問題で安倍政権に楯突いた文科省に対する報復だ」という批判があったため、菅義偉官房長官は、全省庁について厳しく点検すると宣言した。

 ご承知のとおり、今も毎年大量の官僚が退職し、ほとんどが天下りしている。本気で調査したら大変なことになるだろうと思っていたが、結果は、違反案件がたったの6件、関与したのは5府省庁だけ。あの財務省はたったの1件で厳重口頭注意のみ、経産省に至っては0件だった。明らかにお手盛りのずさんな調査を官邸が認めてしまったわけだ。

 この件も、新聞には多少載ったが、テレビではほとんど報道されないままスルーされた。

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さらに、官僚から見て非常に大きな人事も…