日本球界へ復帰の可能性が浮上しているイチロー(写真:Getty images)
日本球界へ復帰の可能性が浮上しているイチロー(写真:Getty images)

 今月16日(日本時間17日)、MLBの公式サイトが今季の去就が未定となっているイチロー(マーリンズからFA)について、日本球界復帰の可能性があると報じた。これはあくまで代理人の発言をもとにしたものではあるが、先月行われた『イチロー杯争奪学童軟式野球大会』の閉会式では、イチロー自身も野球少年から聞かれた日本球界復帰の可能性について「ゼロじゃない限りは可能性は残る」と発言している。もし実現すれば2000年以来18年ぶりのNPB復帰となるが、現在のイチローが最もフィットしそうな球団について考えてみたいと思う。

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 まず条件に当てはまる球団としては、以下の三つがポイントとして考えられる。

1.外野手の層が薄い
2.機動力不足
3.経験豊富なベテランが不在

 この条件を踏まえたうえで、まず除外される球団はリーグ優勝を果たしたソフトバンクと広島になる。ソフトバンクの外野陣は柳田悠岐、中村晃の二人が盤石で若手の上林誠知も伸び盛りであり、バックアップ要員も豊富だ。盗塁数はリーグ4位だが走れる選手は多く、ベテランのチームリーダーという意味でも内川聖一、松田宣浩の二人の存在が大きい。広島も丸佳浩、鈴木誠也の外野手2人がベストナインを獲得しており、安定勢力の松山竜平、若手のバティスタ、野間峻祥も控えている。機動力は12球団でもトップクラスであり、新井貴浩という精神的支柱がいることを考えてもイチロー獲得の必要性は高くないだろう。

 次に除外されそうなのがDeNAだ。外野手は筒香嘉智、桑原将志、梶谷隆幸のレギュラー3人に加えて期待の若手である細川成也と関根大気、ルーキーの神里和毅など全体的に飽和状態にある。またチームの盗塁数が少ないのはラミレス監督の方針であり、走れる選手が少ないわけではない。存在感のあるベテランがいないという点はあるものの、今の状況でイチローを獲得してもチームのバランスを欠く結果になるだろう。外野手が飽和状態という意味では阪神も除外して良さそうだ。糸井嘉男、福留孝介という実績十分なベテラン外野手が既に二人も在籍しており、期待の若手である中谷将大、高山俊、中堅の俊介などの存在を考えると、阪神にとってもイチローにとっても入団のメリットが大きくないことは間違いないだろう。

 日本ハムも選手層は厚くないものの、西川遥輝、松本剛、大田泰示の3人でほぼレギュラーは固定できており、若手との入れ替えが早いチームであることを考えると、イチローの入り込む余地は少ない。日本球界復帰の際は真っ先に声をかけると見られている古巣のオリックスもT-岡田、マレーロの大砲二人が外野手であり、吉田正尚、武田健吾、駿太といった今後の成長が見込める選手が多いことからも、相性は良くないように見える。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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イチローを最も必要とする球団は?