私は今回の病気で六つの病院に足を運んだ。出会った医療者で一番感謝しているのは、ストレッチャーで運ばれるときに「この患者さんはいま右の脇腹が痛む」と同僚たちに大声で伝えてくれた中年の看護師だ。これはあくまで肉体的なことに過ぎないが、一つの痛みに全身が支配される感覚は忘れがたい。
英語で憲法を意味する「constitution」には「体質」という訳語もある。政治記者とすれば、その変更は私たち一人ひとりに関わるテーマであり、もっと重視する人が多くてもいいように思う。
だが、それでも現実の痛みや不安にもがくとき、将来の可能性をめぐる話は後景に退くのではないか――私の中の「患者」はこうもささやく。
総務省は4日、参院選の期日前投票の投票者数が2013年参院選の同時期の1.43倍に上った、と発表した。私自身、これまで何度も利用してきたが、今回は見送った。
あとどれぐらい生き、投票できるかわからない。ならば後事を誰に託すのか。ぎりぎりまで彼らの言葉に耳を傾け、迷い抜きたいのだ。