お風呂場と脱衣場の気温差による血圧の上昇など、寒暖の差が大きい冬に多くなる脳出血。高血圧の男性に多いとされています。治療は主に薬による内科治療です。近年、高齢者に皮質下出血が増えてきました。週刊朝日ムック「脳卒中と心臓病のいい病院」から、その予防や治療などを解説します。
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脳出血は脳の深部に張り巡らされた直径1ミリ以下の細い動脈(穿通枝(せんつうし))が破れて脳内に出血する病気です。
東京警察病院の脳卒中センター長で脳血管内治療科部長でもある佐藤博明医師はこう話します。
「脳出血の最大の危険因子は高血圧です。2015年の『脳卒中データバンク』によると1万7700例の脳出血のうち、高血圧が原因となったものは82%にも上ります。高血圧によって細い動脈の動脈硬化が進み、破けやすくなるのです。また働き盛りの50代から定年過ぎの70代の男性に多いのも特徴です」
脳出血は出血が起きた部位によっていくつかに分けられます。もっとも多いのは脳の中央に位置する被殻(ひかく)に起こる外側型で、脳出血全体の約40%を占めます。年代では50歳未満の比較的若い人に多いのが特徴です。
次に多いのが大脳と中脳をつなぐ間脳の一部にある視床に起こる内側型で、脳出血全体の約30%になります。内側型は外側型とは逆に50歳以上の人に多く発症するのが特徴です。
小脳出血は後頭部にある小脳で起こります。慢性的な高血圧状態の人に多くみられます。
重症化が懸念されるのは脳出血全体の約10%を占める脳幹出血です。脳幹は呼吸などの生命維持にかかわる機能を持っているため、出血量が多ければ死に至ることもあり、助かっても重い後遺症が残る場合があります。
高齢化が進むにつれて注目されているのが、皮質下出血です。その原因となっているのが脳アミロイドアンギオパチーです。アミロイドβたんぱくという物質が脳の中動脈や小動脈に沈着することで血管壁が厚くなり、最終的には血管壁がもろくなって破れてしまうのです。年齢が高くなるほど発症しやすく、男性よりも女性に多いのが特徴です。また、アルツハイマー型認知症を合併していることも多いです。