AERA2023年2月13日号より
AERA2023年2月13日号より

膵臓がんを専門としない他科の医師が行う検査から、AIのアシストにより、膵臓がん疑いの患者がスクリーニングされ、専門医のところに紹介される流れができれば、救命できる膵臓がん患者を増やせるはず。早くそういう医療の形を実現したい」

 とはいえ、日本のプログラム医療機器開発は、海外に後れを取っているのが現状だ。22年9月末の時点で、製造販売が承認されているAI医療機器は23件にすぎない。

■申請と承認の課題

 飯島稔・厚生労働省 医薬・生活衛生局医療機器審査管理課プログラム医療機器審査管理室室長は、「今後より多く、日本で開発申請していただかないと、承認する数は増えていかないと思います」と語る。AIメディカルサービスの代表取締役CEO・多田智裕氏は、承認にかかる時間の長さを問題視する。

「ヘルスケア領域におけるAIの活用は、30年には市場規模が約25兆円産業になるとも言われている成長産業。大手もスタートアップも含めて、承認が下りなければ展開できません。申請数に応じて審査メンバーも増員いただけるよう、期待したい」

 診断の精度が高まり、がんの早期発見につながれば、市民・患者が受ける恩恵も大きいだろう。だが、こうした医療が、私たちの元に届くまでには、制度面の拡充と同時に、倫理問題の議論や、医療を供給する側、受け取る側の意識変革も同時に必要だ。(ジャーナリスト・古川雅子)

AERA 2023年2月13日号より抜粋

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