50年間ロックスターとして生きてきたジーン・シモンズ。せっかくなので、そのキャリアにおいて、最大の幸せと、最も腹立たしかったことを訊いてみた。
「一番、嬉しかったのは初めて曲を作った時だね。ラリー・マーティネリというハイスクール時代の友達とギターを抱えて『マイ・アンクル・イズ・ア・ラフト』という曲を作った。俺にはこんなことができるんだ! と、あの時は自分で自分に驚いた。だって、何もなかったところに自分で音楽を作ったんだよ。感動するだろ? 嬉しくて嬉しくて、自分で歌って演奏した音源を何度も聴いた。俺のミュージシャンとしてのキャリアはあの時から始まった」
この曲も『ジーン・シモンズ:ザ・ヴォールト・エクスペリエンス』に収録されている。
一方、キャリアにおける腹立たしい出来事についての答えは「Nothing!」。
「嫌なことは何一つないよ。俺はずっとハッピーだ」
たとえ大見得だったとしてもカッコイイ。なかなか言えないことだ。
ジーンは『ジーン・シモンズ:ザ・ヴォールト・エクスペリエンス』を持って、ワールドツアーを行う予定。ボックス購入者には手渡しをするらしい。ファンにはたまらない企画だ。
このボックスセットのほかにも、ジーンはさまざまなビジネスを展開している。マクラーレンのブランドマスターに就任、KISS仕様のコーラ「KISS Destroyer Cola」を販売、KISS公認のエアギター弦を販売(エアギターなのでパッケージの中は空っぽ)、著書を2冊執筆、シカゴにロック&ブリューズのレストランを14店舗経営……。
ここまでくると、ロックミュージシャンなのか、ビジネスマンなのか、判断できない。ロックは音楽の1つのジャンルであるだけでなく、体制と闘うスピリッツでもある。ロック・スピリットとビジネス、ジーン・シモンズはどこで折り合いをつけているのだろう?
「俺は思いつくことをただ次々と実現しているだけだ。1日は24時間。その中で、最低限の睡眠、食事、トイレ、メイクラヴを行い、そのほかの時間はすべてやりたいことを考え、実現する。休みはいらない。スケジュールはぎっしりと詰め込みたい。ただそれだけだよ」
休むことなく持てるすべての時間を活動するというのも、ジーン・シモンズ流の1つのロックスピリッツなのかもしれない。(神舘和典)