民放キー局といえども、もはやスポンサー企業に対して殿様商売ができるような時代ではなく、世間からの風当たりが強い“不倫芸能”人は、今後ますますテレビの世界で厳しい扱いを受けることになるだろう。
だがその一方で、近年では鈴木京香主演の「セカンドバージン」(NHK)や上戸彩主演の「昼顔」(フジテレビ)、栗山千明主演の「不機嫌な果実」(テレビ朝日)など、女性主人公による「不倫」を題材にしたドラマが人気を集めているという現象も興味深い。
現実世界では“悪”とされながらも、ことフィクションの世界では不倫を題材にした作品は魅力あふれるコンテンツとして多くの視聴者に受け入れられてドラマや映画の業界では空前の“不倫バブル”が起きているのだ。
では何故、リアル世界での不倫はここまで厳しく叩かれるのか?
その背景には、当然のことながら「現実とフィクションの世界は違う」という至極当たり前の理由もあるわけだが、さらに言えば芸能人と一般人との“距離感の変化”が大いに影響している気がする。
かつて「スター」と呼ばれた大物芸能人の多くは、一般人にとって遠い憧れの対象であり、言うなれば浮世離れした存在でもあった。
芸事を極めようとするその生き様だけでなく、現実に庶民が身につけられないような豪華な衣装や宝飾品を身にまとい、高級車を乗り回し、豪邸に住み、一種独特のオーラも放っていた。
現実社会で生きていながらも、いわば一般人とはかけ離れたフィクションに近い存在であり、だからこそ「不倫」騒動や多少の不祥事を起こしても世間からは大目に見られていた観がある。
だが、昨今の芸能人の多くはかつての「スター」たちのような“浮世離れ感”とは真逆の“親近感”を売り物にしており、実際にそうしたタイプの芸能人ほどテレビなどでも重宝されているのが実状だ。
そのことは、多くのタレントがSNSなどを通じてファンと交流したり、アイドルが頻繁に握手会を行っていることなどでも分かるだろう。