私は白いレースのワンピースを着ただけの少し手持ちぶさたな由希子さんに、小ぶりのバッグを持たせ、店内を一周するよう促しました。さらにレモン色のカーディガンをコーディネートし、いくつかポーズを決めてもらって写真に収め、彼女に見せました。

「なんか、自分じゃないみたい」

 最初は言われるがままにポーズを決めていた由希子さんも、徐々にノリノリに。様々な方向から写された自分の姿に驚きながら、ちょっぴり瞳が潤んで輝き、頬にぽーっと赤みがさしていくのを私は見逃してはいませんでした。由希子さんの中に眠っていた女性らしさが目覚め、それまで抱いていたこだわりが解け出したのです。

 私が「実際に着てみてどうだった? 想像していたのと違った?」と尋ねると、由希子さんは意外な自分の姿に驚いている様子。

「衝撃的です。自分では白なんて恐れ多くて絶対に選ばないし、総レースの洋服なんて恥ずかしくて着られないと思っていましたし。うまく言えないんですけど、スコールが降って、パーッと晴れたような、そんな感じがしました」

 2着目はデートの場面を想定して、「COUP DE CHANCE」の淡いピンクのワンピースを選びました。柔らかく、胸元からウエストまわりにかけてきれいなドレープがデザインされているのが特徴です。伸縮性のあるワンピースは一見、身体のラインがそのまま見えてしまうのではないかと思われがち。でも実際はピタピタッと沿うわけではなくドレープを絶妙に効かせるなど、身体のラインを美しく見せてくれるよう計算されたものが多いのです。

 由希子さんは1着目で心を開いたおかげか、とても嬉しそうに試着室に入っていきました。そして2着目を着た由希子さんの表情は、ますます明るくなっていました。鏡の前で自然にポーズを決め、かすかに色っぽい表情が浮かび始めていました。

 私が、「顔が一気に華やいだわね。それにワンピースの女性らしいラインがきれいに出ていると思うわ」と声をかけると由希子さんは、

「ありがとうございます。私、着こなせてますか? こんな服、選んだことないけど、コレ、本当に素敵です」

 否定の言葉しかなかった由希子さんの口から、「コレ、本当に素敵です」の一言。これこそが運命の洋服に出会うことの喜びなのです。きっと選んでもらったワンピースも、彼女のために精いっぱい寄り添っていたのだと思います。

 すべての洋服に対して言えるのですが、たとえどんなに高級なものでも自分が素敵だと思って着ない限り、その洋服はあなたを輝かせてはくれません。

■パッと目を引き、ハッと手を止める鮮やかな色

 3着目は、写真写り、顔映りともに良いものを意識しました。婚活サイトに登録している彼女は、まず写真で印象づけなければなりません。

 そこで、着ただけでパッと華やぐような、「LIMITED EDITION VIVAYOU」のピンクオレンジのワンピースを選びました。少し高めのウエスト位置にパイピングが施してあり、光沢のある織りが顔を艶やかに見せてくれます。婚活写真といえば、清潔で真面目そうに見える紺や白のブラウスを着る人が多いもの。その中で鮮やかなピンクオレンジのワンピースは、パッと目を引き、ハッと手を止めさせる色でもあります。

 特に婚活サイトのプロフィール写真においては、その他大勢が着ているような服を選んではいけません。なぜなら、たくさんの写真が並ぶなか、自分も「その他大勢」となってしまい、誰の目にも留まらない人になってしまうからです。

 そして最後に、由希子さんのなりたい華やかなイメージを完成させる最強のアクセサリーを合わせます。今回は、小ぶりながら上品なゴールドのグラデーションが利いて主張のある「SWAROVSKI」のネックレスと、さりげなく揺れるイヤリングをご用意しました。「揺れ」は一つのキーワードで、男性が惹かれるポイントでもあります。アクセサリーをつけた由希子さんは鏡の前で、「予算オーバーだけど買おうかな」とその輝きにうっとりとした表情。

 私はこれらのアクセサリーが、由希子さんの心にパワーと勇気を与えてくれる、お守りのような存在になってくれたらと願いました。

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